馬の繁殖期 – 牡馬は人間と同じく年中ウェルカム

仔馬出産

春から秋にかけての日の長い時期になると、馬は繁殖期を迎えます。

牝馬は1年のうちの日が長くなる春先から秋口、9月頃まで、三週間ごとにフケと呼ばれる発情を催します。発情の期間は時期によって大きく変動しますが、平均で5~6日間継続し、その間に種付けをすることになります。

一度の交配で受胎していなければ再度種付けが行われ、無事に着床すると11ヶ月後には仔馬が生まれます。暖かい時期に受胎して、11ヶ月後の暖かくなる時期に生まれるのが馬の繁殖サイクルとなっています。

暖かくなる時期に繁殖期を迎える動物は長日性季節繁殖動物と呼ばれ、春先に妊娠し、翌年の暖かくなる時期に子どもを産みます。

春に生まれた仔馬は食べ物が豊富な暖かい季節に育つことで、早い成長が期待できます。

仔馬は生まれて1時間ほどで立ち上がり、たどたどしいながらも走れるようになります。馬は瞬く間に成長しますが、自然状態では一年ほど母馬の下で暮らします。

馬の妊娠期間は人間よりも長く、しかも一度に一頭しか生まれないため繁殖力は低いといえます。

低い繁殖力を逆に考えると、馬は一頭一頭の生き長らえる率が高いことも意味します。

秋に発情期を迎える短日性季節繁殖動物もいます。ヤギ・ヒツジは5ヶ月ほどで出産するため、翌年の春に子どもが生まれます。

長日性季節繁殖動物も短日性の動物も、春先の暖かくなる時期に子どもが生まれるサイクルをもっています。

 

繁殖期の馬の行動

仔馬出産

馬が身体面で成熟するのは4歳秋ごろですが、繁殖自体は2歳から行えるようになります。

牝馬は発情していない時期には牡馬を寄せ付けず、牡馬が近づくと蹴つたりして拒絶します。そのため馬を曳く際に牡牝の順番を変えることもあります。

男嫌いに見える牝ですが、発情期の間だけは牡が近づくのを許します。

発情(フケ)がはじまると、牡馬の性衝動を促すフェロモンを含んだ尿をしたり、尻尾を上げて外陰部を開閉させるウインキングと呼ばれる行動をします。

牝馬が発情しているかは、牡馬を近づけて牝馬が反応するかで確認します。この時に使われるのが「当て馬」。牝から誘われてやる気になったのに、イチャイチャさせてもらえないのが当て馬の悲しいところ(最近では尿検査で判別)。

牝馬は発情が始まると落ち着きがなくなる一方で、牡馬を受け入れるために動かなくもなります。牡馬は動かないのがお好きなようで、じっとしているのがセクシーアピールになるようです。

牡馬と交配に成功すると、1週間程度で受精します。無事着床したら、327~357日ほどの長い受胎期間を経て出産に至ります。

出産は夜に行われることが多いため、出産期の牧場では夜番が行われます。

 

牡馬は年中発情OK

牝馬が発情すると、それに反応する形で牡馬も発情します。牡馬に決まった発情期はなく、牝馬さえその気になれは牡馬はいつでもOKということ。

人間のオスと同じで、誘惑に弱いのです。いや、人間の男性は特定の相手がいれば、女性からOKサインを出されても遠慮するはずです。我慢しますって!

この習性を利用したのが競走馬のシャトル種牡馬です。

北半球で種付けを終えた後、牝馬の発情期が半年ずれる南半球へ移動させて再び種付けが行われます。サラブレッドは人工授精が認められない代わりに、馬のオスの年中発情できる習性を利用することで種付け回数を増やすことができるわけです。

 

競走馬は発情時期を調節

仔馬出産

動物は概日時計(体内時計)をもっていて、陽の光をもとに調整しています。

馬の繁殖期も日の長さによって調整されており、昼の時間が長い時期ほど生殖活動が活発になります。もっとも生殖機能が活発になるのが夏至を中心とする5~7月ごろのため、11ヶ月後の4月~6月に馬の出産が多く見られます。

乗用馬や競技場では2 ~ 3ヶ月の違いはそれほどの差ではありませんが、2歳からレースに参加する競走馬では、競走成績に違いが生じます。

馬が成熟する4歳までの成長速度は早いため、とくに2歳のレースでは早生まれほど成長の度合いで有利になります。

また、人気種牡馬の種をつけたい場合は、種付けが集中する時期にかからない早めのほうが有利という事情もあってか、繁殖時期のコントロールが行われています。

日照時間に見立てた光を当てることで繁殖時期を調整するため、「ライトコントロール」と呼ばれています。

競走馬生産では、「ライトコントロール」という方法を用いて、人工的に早生まれ生産を行っています。専門用語では、長日処理、光線処理と呼ばれています。北海道のような極端な寒冷地においても、非妊娠の繁殖雌馬に対してライトコントロールを行なうと、2月下旬までに70%、3月下旬までに90%が初回排卵を開始し、その後の発情周期に大きな乱れは認められず、受胎率も高いことが判明しています。一般に繁殖シーズンの早期には、持続性発情、いわゆる「だらブケ」という状態に陥り、あて馬による判断が難しくなり、獣医師サイドの排卵予知診断にも狂いが生じやすいものです。ライトコントロールを実施して繁殖シーズン初回の排卵を早め、1回目の発情を見送り、2回目、3回目の安定した発情において計画的に交配することにより、持続性発情に惑わされることなく、効率的な繁殖管理が可能となります。

◇12月20日(冬至付近)から、昼14.5時間、夜9.5時間の環境を作成。一般的な飼養環境においては、たとえば朝5時半から朝7時30分頃まで馬房内で点灯し、昼間は扉を開けるなど適当な明るさが確保できるように管理し、続いて収牧後夜20時まで点灯する。照明は60-100ワットの白色電球を馬房の中央天井付近、または高さ2.5-3.0m付近に設置。蛍光灯でも全く問題ない。点灯、消灯はタイマーで作動させ開始終了時間を正確にする(時間がずれると効果がない)。

◇24時間照明すると逆効果となり、一定時間の「夜」が必要である。ボディコンディションスコアとして6.0前後に維持されていると効果的である。

◇早期に受胎したとしても、ライトコントロールにより黄体機能が賦活化されるため、妊娠維持に効果がある。3月下旬まで継続すべきである。

サラブレッドと光の話 – 馬事通信

ライトコントロールによる繁殖時期の調整法は海外でも行われています。ただ、早生まれはまだ寒い時期に生まれることになるためか、生まれが早ければ早いほど成績がいいというわけでもないようです。

 

牝馬は何歳まで子どもを産めるのか

30年以上生きることも珍しくない馬は何歳まで子どもを産めるのか。

高齢になると受胎率は落ちますが、20歳以上で出産する牝馬もいます

こちらのフォーラム Chronicle of the Horse では、アングロアラブが28歳で受胎、29歳で出産したという書き込みがあります。人間の年齢にして80歳。高齢出産を通り越して超高齢出産です。

競走馬の場合

競馬のレースで走り、成績を残すことを前提とする競走馬では、産駒(生まれた子ども)の能力が問われます。

競走馬では、その母の繁殖牝馬(肌馬とも呼ばれます)の年齢も参照されることがあります。出産時16歳(人間で言えば50歳)以上を高齢としても、それなりに勝ち馬はいるようです。

海外のレースに目をやると競走馬には高齢出産でも強い馬は多く Rewilding は Da Ra Ra が24歳の時に産んでいます。New Approach は Dam Park Express が22歳での産駒。

統計的にみると高齢出産は弱い印象がありますが、肌馬(繁殖牝馬)の年齢が高くなると受胎率は下がり、出産へのリスクもあるため、生まれてくる産駒の体への影響も不安視されます。

高齢牝馬の産駒成績が統計的にはよくないのは、高齢になればなるほどいい馬の種をつけなくなるという側面も影響している可能性はあります。

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