馬の鳴き声である「いななき」。頭の「い」は馬を意味しています。
漢字では「嘽く」「嘶く」。
馬はいななきのパターンで感情を表したり、コミュニケーションを取っていて、馬同士で相手が仲間を識別できることが知られています。
「いななき」としてもっともポピュラーな擬音語である「ヒヒーン」という、大きく長いいななきは、遠く離れた馬同士が呼び合うときに使われています。友好的ななコミュニケーションの他、けんかや拒否の時に発せられる警告的な「キュイーン」という高いいななきなど、さまざまな鳴き声があります。
このように馬の感情といななきの関係は知られていましたが、いななきの長さと声の高低による分類も科学的に検証されています。
いななきの長さと基本周波数
馬のいななきには2つの異なる基本周波数が含まれていて、基本周波数の一つでは感情の正負を表し、もう一方では感情の強さを表していることが判明しています。
- 機嫌がいい時のいななきは短く、高い方の基本周波数が低い。この時馬の頭は低い位置にある。
- 負の感情を表すいななきは長く、高い方の基本周波数はより高くなる。馬の頭の位置は高くなる。
この結果は、20頭の馬を対象に、馬にとって喜ばしい状況と嫌な状況を作り出して様子を観察したチューリッヒ農業科学研究所によって明らかにされました。
研究では馬をグループから引き離したり戻すことで惹き起こした正負の感情を、カメラとマイクで記録。さらに心拍数、呼吸、皮膚温度を測定して、平常時と感情を発したときの生理的反応も観察したものです。
その結果、馬の感情の正負に関わらず感情の強さを測定することができました。
心拍数や呼吸数、身体の動き、馬のいななきの基本周波数といった要因から、研究者は馬がその時感じていた感情の強さを数値化して分析。
興奮する(覚醒レベルが上がる)ほど心拍数が高くなり、呼吸の増加が大きくなり、馬の感情が肯定的であるか否定的であったかにかかわらず、低い方の基本周波数は高くなるという結果が得られています。
実際の音声
チューリッヒ工科大学 の記事には馬のいななきの入った2つの音声サンプルが掲載されていて、直に確認することができます。
- 一つ目は「高い周波数・低い周波数」
- 二つ目は「負の感情・正の感情」
二つ目の「負の感情と正の感情」は分かりやすいのですが、一つ目はよくわかりません。
興味があったら「馬の感情表現法」という記事の Audio sample をクリックして聞いてみてください。
英語ではいななきにもいくつか表現がある
日本語では馬の鳴き声はすべて「いななき」と表現されますが、英語では鳴き方によって呼び方が異なります。
- 低いいななきは「whinny」
- 高いいななきは「squeal」
- 長いいななきは「neigh」
身近な存在ほど語彙が多くなります。ヨーロッパでは馬の年齢によっても呼び方が変わることからも、馬は本当に欧米の文化に溶け込んでいることが分かりますね。
最後に馬の鳴き声集。違いが分かりますか?
筆者はよくわかりません。
How horses express emotion(チューリッヒ工科大学)
表情とコミュニケーション(競走馬研究所)