哺乳類の体温と一分間の心拍数と寿命の表です。
体温 (℃) | 心拍数 (回/分) | 寿命 (年) | |
---|---|---|---|
鶏 | 42 | 150~400 | 10 |
うさぎ | 39.5 | 205~220 | 6~7 |
豚 | 39 | 60~86 | 10~15 |
やぎ | 39 | 60~100 | 10~15 |
ひつじ | 39 | 60~80 | 10~12 |
牛 | 38.5 | 45 | 12 |
犬 | 38.5 | 50~130 | 13~14 |
猫 | 38.5 | 110~140 | 12~15 |
馬 | 37.5 | 23~46 | 28 |
ヒト | 36 | 66 | 78 |
一貫したデータではないので、参考として考えてください。
哺乳類は一般に体温が低いほうが長生きという研究があります。体温が高いほど免疫力が上がって健康になると言われますが、寿命に関しては体温が低い方が有利なようです。
たとえば馬の体温はだいたい37.5~38℃で人間よりは高いものの、犬猫豚に比べると低く、寿命も長くなっています。
動物の寿命までの総心拍数は、種によらず一定という説があります。一般に心臓の鼓動が早い動物ほど寿命は短くなる傾向にあります。
小さい動物は表面積が相対的に大きく熱が逃げやすいため、体温の維持に早い脈拍が必要で短命となる。一方大きな動物は熱が逃げにくいので脈拍はゆっくりで長生き、という話もあります(ゾウの時間 ネズミの時間)。
寿命までの脈拍数について調べてみると、実際には種によって大きな違いがあります。心拍数が「一定」という表現は盛っている部分があるように思われますが、心拍数と体の大きさには相関関係があるのは確かです。心拍数が220のうさぎの寿命は6~7年。他と比べても短命になっています。
上の表の中では馬(サラブレッド)が一番心拍数が少なく、人間を除けばもっとも長生きをします。国内で40歳まで生きた馬が亡くなったのは2019年の夏のこと。
動物の一生分の心拍数と体温。この二つをくっつけて、体温・心拍数・寿命の相関関係について書けば面白い!と思い立って上の表を作ったのですが…
力量不足でそこまで難しいことを考えるのは無理なことが判明。とりあえず、自分の頭の整理も兼ねて、動物の体温についての一般的なことを書いてみます。
動物の体温は、人間よりも高い傾向にあります。
エネルギー生産のしくみは生物は共通で、体温が高いほど運動能力が増します。空を飛ぶために激しい運動(羽ばたき)をする鳥類は哺乳類よりも体温が高くなります。
鶏が群を抜いて体温が高いのは鳥類故です。
哺乳類だけで比較すると、豚は39℃、犬猫でも38.5℃。人間と比べると動物の体温はかなり高くなっています。冬場に猫を抱くと暖かいのは人間よりも体温が高いためです。
38.5℃といえば、人間がその熱を出したら寝込んでしまう温度です。人間はそれほどの高熱になると身動きもとれなくなります。
(しかし熱への耐性はあるようで、体温が42℃程度まで上がっても、熱そのものによって重篤な症状に陥ることはないと言われています。高熱により重篤な状態に陥るのは体温上昇そのものではなく、体温の調整機能がおかしくなっていることが原因とのこと)。
温度が高いほど身体能力は上がり、ウイルスや菌類に対しても高い抵抗力を持つことができます。したがって体温が高いほど生存には有利になるはず。
ならば人間の体温も犬猫くらい高くていいような気がします。しかし現実には37℃近傍となっている。なぜでしょうか。
体温の高低とメリット・デメリット
体温が高いほど生存には有利になる一方で、高い体温を維持するためには多くのカロリーが必要になります。体温が高くなればなるほど食べる量を増やす必要がある。つまり生命の維持が高コストとなってしまいます。
人類の歴史は飢えの歴史といっていいほど、食料の確保に悩まされてきました。体温が高い人は何もしなくてもより多くのエネルギーを必要とするため、飢饉時に弱いと考えられます。
体温が高いほうが運動能力も上がるのならば、動物を追いかけたり逃げるのに有利です。おそらく病気にも強い傾向がある。
しかし飢饉が生じれば不利になってしまう。
逆に体温が低いと運動能力は下がりがちですが、飢饉には相対的に強くなります。
体温が低ければ飢饉には強い。運動能力の低さも道具で補えばいい。こう考えると低体温のメリットは大きく感じます。
しかし体温が低すぎれば代謝(生命維持のための基本機能)がきちんと働かなくなります。さらに菌に対する抵抗も落ちます。
低い温度では何万という菌類が活動しますが、37度前後の温度下では、有害な菌は数百種類しか生き残ることはできません。
つまり体温の高さそのものが菌を防ぐ仕組みとなっているわけです。
飢えと運動能力と細菌への抵抗力。これらのバランスによって、それぞれの種の体温に落ち着いたと考えられています。
活性酸素の問題
老化の最大の原因と言われる活性酸素(フリーラジカル)はエネルギーを作る過程で常に生じており、体温が高いほど多く発生します。
運動をすると体温が上がるのに加えて呼吸数も増加するため、より多くの活性酸素が生じます。
活性酸素は反応性が極めて高く、そばにあるものを傷つけてしまいます。外からやってきた異物だけを攻撃してくれればいいのですが、残念なことに相手構わず攻撃してしまう。
多すぎる活性酸素は私たちの体の細胞をも傷つけています。喧嘩っぱやいトンがった困り者と言えます。
体内には活性酸素を無効化するための酵素や、発生を抑える機構もあります。しかし余剰となる活性酸素は必ず発生します。
生物学者の長谷川雅美先生は、恒温動物の体温 37℃ は、活性酸素の発生と抑制のバランスの上に成り立ったのではないかと推測されています(体温はなぜ37℃なのか|東邦大学)。
活性酸素を抑制する機能は年齢とともに下がります。その結果、活性酸素の影響を受けやすくなるというわけ。
動物の子どもは代謝が激しく、体温は高く心拍数も多い。歳をとるにつれて体温は下がり、心拍数も落ちていきます。同じ1年でも、子供と高齢者では流れる時間が異なります。歳をとって活性酸素の除去機能が落ちても、代謝自体が下がっているため、ある程度のバランスはとれているのでしょう。
活性酸素と運動能力と抵抗力を別々の項目として書きましたが、活性酸素も免疫機能として働き、体温と運動能力抑制とも深く関連しています。どちらが後でどちらが先というわけではなく、相互に関連して、現在の体温が獲得されたのでしょう。
馬にも水素水を与えることがあるようです。還元物としての水素を運動直後に飲ませれば活性酸素の悪影響を抑えられるでしょう。摂りすぎるとかえって短命になりますが、馬の身体の大きさを考えれば、そこまで与えようもないですから。
水素水は論文ベースでの判断としては疑似科学に分類されていますが、特定の疾患への研究は続けられています。健康一般に根拠つきでいいとは言えませんが、なんらかの影響を与えるというのは事実のようです。
心拍数:
理科年表(ヒトの心拍数は男女平均値、馬はサラブレッド1歳以上)
寿命
鶏:寿命|鳥便り
豚:豚、ヤギ | Wikipedia
うさぎ:うさぎの病院
牛:牛の寿命はどのくらいですか | 明治 | Q&A
犬・猫:ペットフード協会、産経新聞報道
※ヒトと馬の平均寿命は適当