馬は死ぬまで走るのか

馬 群れ クォーターホース

”馬で走って回れただけの土地を与える”

関東に転封されて間もない頃の徳川家康にこう言われ、後に高遠藩内藤家初代となる内藤清成は白馬を駆って広大な敷地(二十万坪という説あり)を拝領したという伝説があります。

その結果、東は四谷、西は代々木、南は千駄ヶ谷、北は大久保にまでおよぶ広大な土地を賜ったと伝えられています。

新宿御苑の歴史 – 新宿御苑

非常に広大な土地を駆け回ったため、家康のもとにたどり着くとその馬は死んでしまったとされています。

後に街道の整備などのために目減りはしたものの、現在の新宿御苑の前身となったのがこの時清成が拝領した土地とされています。


“Beggars mounted run their horse to death”

こちらはシェークスピアの「ヘンリー6世 第三部」の句。

直訳すれば「乞食を馬に乗せたら死ぬまで走らせるだろう」。転じて「愚か者はやりすぎる」といった意味。


内藤清成の逸話は事実かフィクションかは分かりませんが、洋の東西を問わず「馬は死ぬまで走る」ものと捉えられています。「走る」に限らず無理をさせれば、直接か遠因かによらず、死んでしまいます。

 

馬は死ぬまで走り続けるか

本気で鞍上が馬を駆れば死ぬまで走るだろうと考える人は多いですが、そうでない馬もいるだろうというのが答えのようです。

限界を過ぎる前にへばるのが人間の感覚ですが、馬は限界を超えて走るため(走れてしまうため)、心臓や呼吸器系に障害が出て死ぬケースがあります。

死には至らなくても、無理をして走ればなんらかの影響が出ることがあります。


ばんえい競馬では2018年3月25日(日)に、ニュータカラコマ(牡・10歳)が、心臓麻痺でレース中に死亡しています。

サラブレッドレースのレース後に心臓麻痺で死亡するといったことがありますが、これは内藤清成と同じ例と言えます。

黄色信号の段階でへばってうずくまれば分かりやすいですが、馬は身体の限界を超えて動いてしまうため、馬の競技では獣医のチェックが多々行われています。

報道などでは「心臓麻痺」が用いられているため、ここでも一般的な表記として用いています

 

馬はひたむきに走るが…

長距離マラソン中はもとより、若い頃に激しいスポーツをしていた人が中年を過ぎてからのランニング中に心臓疾患で亡くなるケースはそれなりにあるようで、激しい運動は体にはよくないと考えられています。

そういう意味で、競走馬の急性な心臓疾患のリスクは激しいスポーツ全般の抱えているリスクと言えます。


「サラブレッドは走るために生まれた」「馬はひたむきに走る」という表現を目にします。死ぬまで走るくらいなのだから、「ひたむき」には違いありません。

しかし、馬は人間と違って「自らの目的のために、自発的に勝利を目指して走っている」わけではありません。楽しいから、目標があるからといった内的な動機から走っているわけではありません。

「レース」という枠組みを理解しているかは別として、中には「勝ち負け」を理解する馬もいるのかもしれません。しかし野生の群れでは、トップを走るのはボスの役割。多くの馬にとってトップを取るという動機はありません。

死ぬまで走れてしまう性質は、野生で生き延びるために獲得されてきたものです。そういう性質の馬が生き残って現在に至っているということ。

人間の論理を動物に投影しすぎると、動物への理解からは遠ざかってしまうかもしれません。

 

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