馬は甘いものが好きです。ニンジンやリンゴを好む馬が多いのも甘みが強いから。
「砂糖」そのものも好きで、角砂糖や氷砂糖をご褒美にするケースもあります。
もちろんいくら好きだからといって与えすぎはだめ。体によろしくありません。
さらに犬猫にチョコレートを与えてはいけないように、馬に人間のスイーツをそのまま与えるのはまずいこともあります。
少々口にしたからといってどうこうならないことが多いですが、与えていけないものを理解しておけば、馬のふれあいイベントにも安心して参加できると思います。
このページの食べていいもの悪いものリストは、主に Horse Illustrated の記事をもとに作成しています。
馬の状態や個体差によっても異なることがあります。
安全性を保証するものではないことはご了承ください。
また、おやつを与える前に、必ず馬の管理者に確認してください。
身近にある馬に危険な草木についてはこちら。
その葉っぱ、馬にとって毒になるかも 馬に危険な身近にある草木与えていいおやつ
馬のおやつの定番はニンジンとリンゴ。
ニンジンはスティック状に切り分ける。リンゴは普通に四つに切って、芯を取ってから与えるといいです。
- ニンジン
- りんご
- アプリコット
- ベリー(いちご、ブルーベリー、ブラックベリー、ラズベリー、ローガンベリーを含む)
- バナナ
- メロン(皮なし)
- ぶどう
- マンゴー
- 柑橘類(みかんなど)
- 桃
- 梨
- パイナップル
- プルーン
- スイカ
大きいものは予め切り分けておきます。
毒性があったり、のどに詰まらせることがあるので、芯と種は取ってからやってください。
果実の部分はよくても葉はだめな植物もあるので、「実」だけと考えておくと安心でしょう。
与えてはいけないもの
- アボカド
- ジャガイモ
- ブロッコリー
- キャベツ
- カリフラワー
- ケール
- ニンニク(生はだめ)
- ネギ
- タマネギ
- ナス
- トマト(熟さないものは特に注意)
- チョコレート
- カフェインの入ったもの
チョコのテオブロミンやカフェインは、アルカロイド(神経に影響のある植物の成分)というくくりです。
おやつか弁当かは分かりませんが、馬酔木(あせび)もこの枠にはいります。
ナス科とアブラナ科の植物は基本的に避ける。
Kentucky Equine Research では、チョコは少量なら影響はないが、競技などの尿検査ではひっかかるとしています。
Feeding Treats to Horses – Kentucky Equine Research
量や条件によるもの
総菜パンや菓子パンは避ける。
無添加のパンでも、小麦のパンは消化と腸内細菌のバランスの関係で疝痛(馬の腹痛)の原因となることがあります。
成長期や妊娠期などの特定の条件でなければ、おやつ程度なら与えて構わない。しかし栄養バランスは好ましくはないということのようです。
小麦ではなく大麦やエン麦(オーツ麦)が原料のパンなら馬の餌と変わらないので、問題は少ないと思います。
おやつの与え方
餌の与え方にはバケツや飼い桶に入れて与える方法もあります。が、手でやりたいですよね。
- おやつは切り分けて、種や芯は取り除いておく
- 手で食べさる場合は、おやつを手のひらに乗せて馬の口元に持っていく
スティックにしてないけど、動画のようにやると指を噛まれない。
餌の与え方について
通常は手で与えて支障はないのですが、前出の Kentucky Equine Research では、いつも手ずからやっていると、なかには噛むようになる馬もいる。そのためおやつもバケツなどで与えるほうが安心としています。
馬におやつを与える際の注意
人間と馬はまったく異なる体をしています。食べ物が違うだけでなく、消化の過程も異なります。
草食動物は植物のセルロースを体内の微生物で分解して、エネルギーや栄養素に変えています。
美容と健康を意識する人にはお馴染みの「腸内フローラ」ですね。馬の腸内の細菌のバランスが崩れると、食べたものをうまく消化できなくなってしまいます。
生物の体は、変化が生じても一定の範囲に収まるよう自動的に調整されています。しかし腸内フローラは身体のコントロールとは無関係に酸性度と入ってきたモノによって決まります。コントロールが効かずバランスが崩れやすいため、餌の直接的な毒性だけでなく、消化のことも考える必要があります。
動物も「同じ生き物」として人間の延長で見てしまいがちですが、全く違う生き物です。人間には問題がなくても、動物にだめなものはたくさんありますよね。
少し注意が必要なのが「体によくはないけど少量なら問題ない」ものについて。
飼い主によってはパンは「一切だめ」という人もいれば、「このくらいならいい」と考える人もいます。
親の考え方の違いで子どもに与えるものが家庭によって異なるのと同じことです。
飼い主の考え方だけでなく年齢や運動量、日常の餌とのバランスもあるので、おやつを与える際は飼い主や管理者に聞いてからにしてくださいね。
馬とのふれあいイベントがあるけれど、どんなおやつを用意していけばいいのか。何を与えてはいけないのか分からない。
そんなときは無難にニンジンかりんごを持っていくか、主催者に聞いてみるほうがいいです。
血糖値をうまく調整できない馬もいるため、糖分の多いものをあげてはいけないケースもあります。
*インスリン抵抗性:人間でいえば糖尿病の原因となる代謝異常
馬のごはん
おまけとして馬のごはん。
馬のごはんは「草」です。繊維質の多い草を一日中食べるのが馬の食性です。
人間に飼われている馬はそこまでの自由はありませんし、より多くの運動をします。そのため牧草に加えて穀類やミネラルやビタミンなどのサプリメントも与えられています。
それぞれの量や配分は、その馬の体重、運動量、年齢によって調整されています。
通常の「草」は粗飼料、その他穀物などの高カロリーな餌は「濃厚飼料」と呼ばれます。
粗飼料はいわゆる普通の牧草。イネ科とマメ科の植物です。
濃厚飼料は、畜産での飼養に用いられるカロリーの高い穀物などの餌のことです。牧草の「粗」に対して「濃厚」なわけです。
濃厚飼料にはオオムギやエンバクやフスマ、トウモロコシなどがあります。フスマは小麦の種皮。ケロッグの「オールブラン」の原材料。エンバク(燕麦)はオーツ麦のこと。ミューズリーやオートミールですね。
フスマは普通に与えられますが、小麦そのものはグルテンが好ましくないため避けられます。
補足
動物の餌関係はさまざまな考え方があるので補足を記載しておきます。
馬にやってダメなものリストに載っているものでも、少量なら問題ないと考えて与えている。
昔からこうしてきた。問題なかったから続けている。
こういった意図を否定するものではありません。
筆者は科学的根拠に基づいて、これ以上はダメ、このくらいなら大丈夫とは言えません。
分かりやすく人間の医療を例に考えてみます。
お酒は伝統的には少量なら健康にも好ましいとされていました。しかし最近になって、少量のアルコールでも害になるとする研究がいくつか出ています。
酒は少量なら百薬の長と称され、ずっと飲まれています。そして特別な問題もなく現在に至っています。
この場合、「アルコールは量を問わず害はあるらしいけど、少量であればそれほどの問題にはならないよね」という結論になります。
もちろん子供には与えていけないし、年をとったら控えなければいけない。そう考えれば、一概にこれはだめだとは言えませんよね。
この項は、とりあえずどんなものをやっていいかを知りたい人に読んでもらい、詳しくは馬の所有者または飼養者の方針を確認してください、という考えで作っています。
かじらせて与える方法を割愛しているのも、同じ理由からです。