馬の性別 せん馬
騸馬(せんば)は去勢された牡馬(ぼば)のこと。
騸は「騸」は馬へん、つくりは扇の旧字体。常用漢字に含まれないため、セン馬と書かれることも。英語では “Gelding” 。
去勢された牡馬が騸馬なのに対し、去勢された雄牛は閹牛(えんぎゅう)と呼ばれていたようです。
馬の去勢は 前6世紀から前3世紀ごろに、現在のウクライナのあたりに栄えた遊牧民によって行われたのが始まりと考えらえています。
個体差はあるものの、タマタマを取ると気性(気性:性格)がおとなしくなり扱いやすいことから、競馬から引退して乗馬馬になるときに去勢されることが多くなっています。
去勢するメリット
去勢をすると、血中のテストステロン(男性ホルモン)濃度は手術後48時間以内に低下します。一方、体型や筋肉の変化には半年ほどかかるとされています。
去勢は扱いやすくなるという人間側にとって都合がいいばかりでなう、馬にとってのメリットがあります。
- 気性の改善
- 体質の改善
- 筋肉が柔らかくなる
- 精巣に関わる疾病のリスクが下がる
- 気性の改善
個体差があるためすべての馬というわけではありませんが、去勢をすると攻撃性や荒々しさが減ります。闘争本能がそがれるためかおとなしくなり、人間が扱いやすくなります。
なかなかいうことを聞かない馬と素直な馬とでは、同じ時間トレーニングをしても質に差が生じることになります。気性の激しさがいい方向に出れば結果にも結び付くかもしれませんが、なかなかそうはいかない。
去勢することで雄々しさが減って文字通りの草食系になれば、トレーニングもしやすくなります。
競馬から引退した競走馬が乗馬として引き取られる場合はほぼ去勢されます。
体質の改善
精巣を取り除かれると男性ホルモンテストステロンの量が下がり、結果的に体質が改善されることがあります。体調が安定するという人もいます。
年齢を重ねると首まわりやあごをはじめとして肉がつくようになり、体型もも横に広がる傾向にあります。筋肉にせよ脂肪にせよ付きすぎは運動能力に影響を与えることになり、体重が重くなると足元への影響も生じえます。
去勢をするとホルモンバランスが変化して一度筋肉の量が減るため、体型も変わることになります。
女性ホルモンの量が相対的に増えると筋肉が柔らかくなります。筋肉隆々でがっちりした肉体より、柔らかい筋肉の方が故障などのリスクも下がると考えられています。
さらに精巣関連の疾患も抑えられるため、去勢は馬の健康にとってもメリットが多いです。
もちろん個体差があるので、去勢によって体質が弱くなるケースもあります。
去勢すると競馬では出走できないことも
馬の健康にとっても人間にとってもメリットが多い去勢ですが、マイナス面もあります。
競走馬としてもっとも大きなマイナス面は出走できるレースに制限がかかること。クラシック路線のレースは優秀な繁殖馬を選別する目的があるため、出走条件が牡牝限定になっています。
牡でも牝でもない騸馬はこれらのレースに出られません(かつては天皇賞もだめだった)。
かといってタマタマがないことを理由に牝馬限定レースにも出られません。
牡牝限定レース
- 朝日杯フューチュリティステークス G1 馬齢 2歳 牡牝
- ホープフルステークス G1 馬齢2歳 牡牝
- スプリングステークス G2 馬齢3歳 牡牝
- ニュージーランドトロフィー G2 馬齢3歳 牡牝
- 皐月賞 G1 定量 3歳 牡牝
- NHKマイル G1 定量 3歳 牡牝
- 東京優駿 G1 定量 3歳 国 牡牝
- 神戸新聞 G2 馬齢 3歳 牡牝
- 菊花賞 G1 馬齢 3歳 牡牝
去勢に抵抗がある人が多いけれど、メリットは大きい
日本では明治に入るまで家畜の去勢は一般的ではありませんでしたが、遊牧民や家畜を食べる文化では古くから行われていました。
動物の利用という観点からすれば、扱いやすくするのは理にかなっています。結果が残せていない競走馬は、去勢しようがしまいが子供を残せないことには変わりがないという面もあります。
馬に限らず犬猫でも去勢にメリットがあるとは分かっていても、抵抗のある人も多いようです。宦官も受け入れなかったことを鑑みると、去勢される動物に同じオスとして同情している面ばかりでなく、文化的な抵抗感があるのでしょう。
しかし去勢により人間が扱いやすくなるばかりでなく、馬の福祉に寄与する面があるのも事実です。
牡馬〔馬の性別 – おすうま〕牝馬〔馬の性別 – ひんば〕