馬に関わる仕事がしたいなら『装蹄師』が狙い目

馬に直接関わる仕事と聞いて、あなたが思い浮かべるものはなんですか?

  • 乗馬クラブのインストラクター
  • 牧場の従業員
  • 競馬騎手
  • 調教師
  • 獣医

数え始めるときりがありませんが、その中に『装蹄師(そうていし)』という職業はありましたか?

装蹄師は文字通り馬に蹄鉄を装着する技術者で、人間に使役される馬にはなくてはならない存在です。メディアでもおなじみの西内荘さんや現代の名工に選ばれた福永守さんなど著名な方はいますが、縁の下の力持ちなので基本的に表に出ることがあまりなく、マイナーな印象ですよね。

装蹄師の人数は全国あわせて500人ほど。毎年11人前後の新人装蹄師が誕生しています。

11人という人数は、5名~10名くらいの卒業生しかいない中央競馬の騎手と比較すると多く感じます。しかし職場が競馬場に限られているJRAの騎手と違い、装蹄師は北は北海道から南は鹿児島までと広い範囲で仕事をします。そう考えると少ないですよね。

そして実務を15年経験しなければ一人前の装蹄師と認められない、長い修練が必要な職人でもあります。

蹄鉄は競走結果に影響するだけに、信頼を得た装蹄師なら年収数千万円を稼ぐと言われるほど収入が得られる職業です。競走馬が集まる美浦や栗東のトレーニングセンターには開業している装蹄師が何人もいます。

もちろんレースに出走する前の幼駒や、トレーニング段階の馬の装蹄をする装蹄師も牧場や外厩で活躍しています。また競馬会や乗馬クラブの職員として技能をふるっている人たちも多くいます。

地味ながらも馬の健康と走りに重要な役割を負う装蹄師ですが、年々志望者が減っているそうです。後継者不足の可能性に危機感を抱いた装削蹄協会は、資格を取るために必要な費用をこれまでよりも大幅に減らしました。需要が比較的安定していて、売れっ子にならなくても生活をしていける装蹄師は今が狙い目かもしれません。

 

装蹄実技見学もできる装蹄教育センターオープンキャンパス

蹄鉄を履かせるだけではない装蹄師の仕事

馬に蹄鉄を装着することを蹄鉄を打つと言います。

装蹄師の仕事は蹄鉄を打つことですが、そこにはさまざまな要素が含まれています。

例えば五冠馬『シンザン』は独特の走り方で走るたびに蹄を痛めていたため、装蹄師の福田忠寛は専用の蹄鉄を拵えています。

馬の足は動くたびに血液を送り出すポンプの役割を担っているので、非常にデリケートで重要な役割を果たしています。生まれつき脚の形が悪い馬は、蹄を調整して蹄鉄を履かせることで正常になることがあります。

馬体や立っている姿から適切な足の形を想定して装蹄するため、理学療養師としての側面もあります。

蹄鉄を打っている装蹄師馬の蹄鉄はどうやって履かせるの?『装蹄』の手順を知る 蹄鉄装蹄蹄鉄の歴史

装蹄師資格の取得方法

装蹄師の資格認定は公益社団法人 日本装削蹄協会が行っています。

装削蹄協会の認定する資格には3種類あり、講習会で2級の取得が装蹄師の第一歩となります。

その後実務経験を積むことで1級を取得できるようになります。一人前となる指導級の資格の認定試験の受験資格は、さらに10年の年月が必要な長い道のりとなります。

  • 2級認定装蹄師資格
  • 1級認定装蹄師資格
  • 指導級認定装蹄師資格

蹄師資格を得る条件

装蹄師の第一歩とも言える2級認定装蹄師資格は、装削蹄協会の主催する1年間の講習会を受けた上で、期間中と修了後に実施される試験に合格することで得られます。

2級の資格は1年間の受講が必須条件となっており、講習会を受講せず試験だけを受けることはできません。

1級認定装蹄師資格は、2級の資格取得後4年以上の実務を積んだ上で1級認定装蹄師資格者昇級研修会を受講し、昇級試験を受けて取得します。

指導級認定装蹄師の資格を得るには、1級の資格取得後9年以上の歳月が必要となります。9年以上の実務を経験することで指導級認定装蹄師資格者昇級研修会を受講し、試験を受けることができます。

一人前の装蹄師になるまでの修行期間が長いと言われる理由は、2級取得から指導級認定装蹄師までは最短でも15年かかる計算になるためです。

2級認定装蹄師資格取得

2級認定装蹄師資格講習会参加のための試験は東京で行われます。一次試験は高等学校卒業程度の一般教養レベルの筆記試験、二次試験は面接と体力テストが行われます。

合格したら宇都宮市にある日本装削蹄協会の装蹄教育センターの全寮制の環境で、4月から翌3月までの1年間をかけて装蹄の技術を身につけます。

講習会では既製品の蹄鉄を用いずに一本の鉄の棒から蹄鉄を仕上げる造鉄と装蹄の理論、実技を中心に学びます。さらに馬の脚の生理や解剖と言った馬の運動についての知識から馬の乗り方まで、必要となることは一通りカリキュラムに組みこまれています。

生活環境

講習会全寮制で行われます。それだけに気になる寮ですが、すごくきれいです。人数分の個室があるため、プライバシーも確保されて快適な環境で学ぶことができます。

田舎だけに都会暮らしの人には自由が制限されるように感じられるかもしれませんが、生活環境はよさそうなので羨ましい環境です。

募集要項

募集人員は16名。受験資格は平成30年4月1日の段階で18歳以上のもの。試験内容は一般教養の筆記試験と面接、体力テストがあります。

受験費用は21,600円(平成30年度募集)となっています。

講習会にかかる費用

食費や光熱費も含めた1年間の受講にかかる費用は平成30年度募集から大幅に減額されていて、計算上は約160万円となります。

平成30年度募集要項

受講料 : 820,000円 (税込)
講習実費: 400,000円
寮内生活費:月額約 3 万円
(生活費は講習日の食費(朝食、昼食、夕食)および受講者が使用する個室の電気料金で、概算で月3万)

詳細平成30年度装蹄師認定講習会募集要項

参考までにH28年度の実績値を見ると、一年で260万円近くかかっていました。来年度からは100万円ほど下げられる計算になります。

平成28年度実績(参考)
(1)受講料—151万2,000円
(2)寮管理費—30万8,000円
(3)講習実費—40万円
(4)寮費—1ヶ月ごと約3万円から3万5千円(個室電気代、食費)
講習期間 1年間(4月~翌3月:夏季・冬季休暇あり)
講習形式 全寮制(センター付属八汐寮)

 

資格取得後の働き方

装蹄師には組織に属して仕事をする勤務装蹄師と、独立して個人で仕事を請け負う開業装蹄師がいます。

勤務装蹄師は乗馬クラブ、生産・育成牧場、JRAやNARに就職して、勤め人として装蹄に携わります。

技術職として勤務するので、福利厚生なども含めた待遇は組織に準じたものになります。法人組織化している開業装蹄師の元で働く場合も、勤務と考えていいのかもしれません。

一方の開業装蹄師は自営業なので、仕事の依頼数と価格で収入が変わります。腕のいいベテランともなれば、数千万円を稼ぐこともあるとか。いずれ独立して開業装蹄師を目指す人は、ベテランの装蹄師に弟子入りして研鑽を積むことになります。

引く手あまたのカリスマ装蹄師でもなければ馬がいる場所は限られているために、開業といってもそれほど多様なお客さんを相手にすることはないようです。馴染みのない人とのコミュニケーションが苦手でも、わりとなんとかなる業界かもしれません。

勤務、弟子入りいずれにしても2級認定装蹄師を振り出しに、装蹄師として一人前と言える指導級認定装蹄師資格の取得までに15年かかります。

メディアでもおなじみの装蹄師西内荘さんは10年で指導級を取得されていますが例外中の例外で、ふつうは独り立ちできるまでに15年間かかる長い道のりが待っています。

 

人手不足が予想される装蹄師

日本装削蹄協会では装蹄師の適正な人数を500人ほどと見込んでおり、毎年11人程度の装蹄師養成が必要としています。

現在では毎年11人の新たな装蹄師を送り出すために、辞める人や装蹄師にならない人が出ることを考慮した上で16人の入学者を募集をしています。

しかし入校希望者数は1998年、1999年の69人をピークに年々減少を続けており、2015年、2016年には定員割れのため、2時募集も行われています。

志望者数が少ない原因としては、体力的に辛そうなこと、金銭的な負担の多さ、長い下積みが敬遠されてのことだと考えられています。

「500人の装蹄師が必要」という予想が正しいのか正しくないのかは現段階では分かりません。2012年頃から競馬人気は復活してきましたが、回復が続くとは誰にも言えないからです。ただ、馬は一頭一頭違うために合理化しづらいことを考えれば、急に人が余ることも考えづらいとは言えます。

昨年まで260万円ほどかかっていた費用が大幅に減額されて160万円ほどになったので、受講にかかる経済的負担は減っています。

装蹄師は保定(馬の足を支えること)のための中腰で腰に負担がかかる大変な仕事ですが、馬に携わる仕事をしたいと思っているならいい選択肢ではないでしょうか。

 

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