馬の視覚 馬はどのように世界を見ているのか

シェトランドポニー

馬の目は顔の横側についており、350度という広い視野をもっています。

片目視野が広いために両目で捉えられる範囲は狭く、顔自体が邪魔になって見えにくい場所も生じます。捕食者から逃げるために獲得された広い視野ですが、馬の目には他にも特徴があります。

馬の顔正面・目馬の目 馬の視野は350度 

馬の色覚

馬は赤が認識できないため、赤やオレンジのない、やや色彩に欠ける景色を見ていると考えられています。

色の知覚には錐体細胞(すいたいさいぼう)が関わっています。人間には錐体細胞が3種あり、三色型色覚と呼ばれています。それに対し馬の錐体細胞は2種類。このため人間とは認識できる色の数が異なります。

人間と馬の色覚Stale Cheerios

色の知覚と認識は必ずしも一致しませんが、人間でいう黄色から青の世界で生きていると考えられ、隣り合う黄色と緑の区別も付けづらいようです。

下の画像の上二つは人間の見た景色、下の二つが馬の見ている風景のイメージ。

上:人間 下:馬の色覚Stale Cheerios

馬の認識パターンから想定した色彩なので、馬の感覚としてはもう少し鮮やかに見えているかもしれません(たとえば人間の血管が青く見えるのは錯覚によるもの。:静脈錯視)。

 

色彩への反応も鈍いようで、足元に置いたバーが単色だと把握しづらく引っかかることがあるそうです。障害などのバーがシマシマなのも、馬の注意を惹きやすくするための措置なのです。

障害 バー

赤色も草と同じ緑に見えるということは、赤色の花弁も茎の延長として知覚しているのかも?

 

馬の夜目

馬の睡眠時間は短く昼も夜も活動するため、暗いところでも夜目がきくようになっています。

馬が夜目の利く秘密は眼球の構造にある。

瞳孔から入った光は、網膜に像を結び、網膜表面の視細胞を刺激する。光の刺激を受けた視細胞はその刺激を電気信号に変え、視神経を通じて脳に送る。もちろん夜など、光が弱ければ視細胞に対する刺激は弱くなり、結果的には見えにくいということになる。

馬の目の網膜の後ろ側にはタペタム(輝板)が存在する。タペタムは、網膜で吸収されずに透過した光を反射する役割を持っている。タペタムからの反射光は再び視細胞を刺激する。すなわち馬の視細胞はタペタムがあるために2回、光の刺激を受けるのである。タペタムはいわば光の増幅装置ともいえる。

ネコの目が夜中に光っているのを見たことがある人は多いと思われる。馬の目はネコほどではないにしろ、同じように光る。ネコにも馬にも、網膜の後ろに光をよく反射するタペタムが存在するからである。

馬の眼(競走馬研究所)

タペタム

https://www.youtube.com/watch?v=qA9Bp9wwtZY

 

馬の動体視力

これ以上ないというくらい過不足なく書かれているので、コピペさせてもらいました。

サラブレッドは時速60キロで疾走する。これほどまでのスピードはなかったにしろ、かれらの祖先にあたる野生馬たちも健脚を誇っていた。角や牙などの武器をもたない馬は、敵におそわれればとりあえず逃げるという戦術で身を守ってきた。馬の体の各パーツは速く走るという目的にあわせて作られている。もちろん視覚も例外ではない。

何かをじっと見つめたあとで、さっと眼を白い壁に転じると、今まで見ていたものがその壁に映し出されているように感じる。これは眼の残像作用と呼ばれるものである。映画がこの現象を利用しているのはよく知られている。ふつう映画では1秒間に24コマの画像が次々にスクリーン上に映しだされるが、人の眼にはスムーズに動いているように見える。前の画像が残像として眼に残っているうちに次の画像が映しだされるための錯覚といえる。人に比べ、馬ではこの残像の持続時間が短いことが知られている。映画は馬の眼には点滅する連続写真のようにしか見えていないと考えられる。

残像の持続時間が短いという馬の眼の特徴は、疾走時には有利に働く。その時間が短いことで、高速で走っている時でも眼にうつる風景は流れてしまわない。敵の位置を常に確認しながら走り続けることができるのである。もっとも、速く移動する能力を持った動物の眼の残像の持続時間は大抵短いとされている。馬を追う敵も、この点に関しては同じ装備を身につけているといえよう。

馬の眼(競走馬研究所)

 

人間とのモノの見え方の違い

視覚からは少し離れますが、認知・認識のレベルの違いもあります。

チンパンジー研究でおなじみの京都大学霊長類研究所では、イルカ・サル・ヒトに加え、馬の図像認識能力の実験を行っています。

参考 ウマの目からの眺め:ウマ、イルカ、チンパンジー、ヒトにおける図形知覚の比較京都大学

実験はタッチパネルに画像を表示させ、口(鼻先)で選ばせるという手法。タッチすると音がして餌がもらえて嬉しいパターン。

この画像では、二つの画像の大きさの違いをどの程度認識できるかの実験を行っています。

京都大学視覚認知実験

グラフは数字が大きいほど大きさの比較が苦手であることを表します。人間やチンパンジーに比べて、馬は大きさの比較が極端に苦手という結果となっています。

 

次に行われたのが、図像の「形」の認識能力の実験。表示させた記号をどれだけ別のものと判別できるかを測っています。

京都大学視覚認知実験

左から ウマ、イルカ、チンパンジー、ヒト。

記号同士が近いものほど間違えた率が高く、遠いものほど弁別できていることを表しています。

人間だとかまぼこ型と◯は間違いやすい。馬はかまぼこ型と◯はそこそこ区別できるものの、かまぼこ型とSを間違えやすいということ。

△とZとXは人間にとって全く違うのに、馬には近い分類のものと認識されているようです。

ウマとヒトでは、同じものを目にしても違った形として見ているかもしれませんね。

 

動物の視覚

馬に限らず動物一般に当てはまることですが、言葉を持たない動物の視覚の情報は、そのまま「画像」として記憶されています。

人間以外の動物は人間のような概念的な把握をしていません。カテゴリの仕分けも異なるため、人間からすると同じに見えるものでも、別のものと認識されているようです。

この感覚は理解しづらいのですが、動物学者で高機能自閉症のテンプル・グランディン博士の自身の感覚も交えた説明が分かりやすいでしょう。

一口に自閉症と言ってもさまざまですが、視覚優位の場合はグランディン博士のように画像として捉えているようです。光などがきつい刺激と感じられる点は、グランディン博士を主人公としたテレビ映画「テンプル・グランディン」で分かりやすく描かれています。

人間は見たものを概念として認識し、抽象化することができます。人間が道具を作ったり過去未来現在を語ることができるのは、これらの能力によるもの。

裏を返すと概念として理解してしまうために、画像には映っているもの(情報)を見落としてしまう(気づかない)ということが生じます。

それに対して動物は見たままの世界を認識し、記憶している。世界の認識の仕方が大きく異なっています。

育った国や男と女の間ですら考え方の違いが生じるのに、全く世界の見方をしている動物を理解することは本当にできるのだろうかと思えてきます。


認識できる色彩も違えば目の使い方も違う。人間の目には風景が流れてしまう速度でも、馬には普通の風景に見える。

人間の見ている景色と馬の目に映る風景は大きく異なるのでしょう。

馬はどのように色を見るのか (Stale Cheerios)

馬の眼(競走馬研究所)

馬の顔正面・目馬の目 馬の視野は350度 

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