蹄鉄

蹄鉄

蹄鉄(ていてつ)は馬の蹄(ひづめ)の摩耗や破損を防ぐために足の裏に用いるU字型の金属製保護具。馬蹄とも呼ばれ、蹄鉄を装着することを装蹄といいます。

蹄鉄は鉄やアルミなどの合金で作られており、蹄の状態に合わせて形状を整えてから鋲(釘)で固定されます。鋲は神経の通っていないところに打つため、馬が痛みを感じることはありません。

蹄鉄を熱して形を整える熱装装蹄が一般的ですが、競走馬に用いられるアルミ製の「兼用鉄」は火を使わない冷装装蹄で装着されます。

通常は既成の蹄鉄を用いてその馬に合った形に整えて装着しますが、馬の蹄の形や状態によって合うものがない場合は鉄の棒から作ることもあります。

蹄鉄自体が摩耗するため、2週間~6週間ごとに取り替えられます。馬の蹄は一月で 8mm ~ 1cm ほど伸びるため、装蹄の際には蹄を削る削蹄(さくてい)も併せて行われています。

蹄鉄には用途に応じてさまざまなものがあり、歩様(あるき方)改善のため、理学的に用いられるタイプの蹄鉄もあります。

必要な形状の既製の蹄鉄がなければ、装蹄師は鉄の棒から作りあげます。

 

蹄鉄が必要な理由

蹄鉄はなぜ必要なのか。ムスタングなどの野生状態の馬は蹄鉄がなくても支障なく生きています。爪の伸びる量と削れる量が均衡していれば蹄鉄は必要ありません。

野生での馬は危機に見舞われなければ激しくは走りませんし、人間を背負ったり、馬車を引いたりすることもなく、まったりと生きています。また、多様な地形を歩くことで蹄は固くなっていくという側面もあります。

人間に使役される馬でも、放牧などで必要がなければ外されることもあります。

蹄鉄での蹄の保護は、家畜化されて使役されるようになったために必要となったとも言えます。

しかし蹄に打ちつけて留める今の形の蹄鉄がはっきりした痕跡で出現したのは紀元後400年前後と、ハミや鞍に比べるとずいぶん遅いと考えられています(紀元前からあったとする根拠もあるにはある)。

家畜化された馬に蹄鉄が必要となった原因は、野性状態よりも運動量が多くなることや、多様性の低い環境におかれて蹄が固くなる機会が減ったことなどがあります。また、スピードが最重要視されるサラブレッドでは蹄が薄くなっており、遺伝的淘汰の結果として蹄自体が弱くなっていることも影響しています。

  • 栄養価の低い餌
  • 運動量
  • 気候
  • アンモニアへの接触
  • 遺伝的要因

馬に蹄鉄がなくてはならないものとなった理由はいくつか考えられますが、いずれも家畜化され、人間に使役されるようになったことに起因しています。

 

蹄鉄と蹄裏の形状

蹄鉄は馬の足の裏の神経の通ってないところから蹄壁(蹄の表面)に向けて打ち込まれた鋲で固定されています。蹄壁から飛び出した部分に傾きをつけて固定するため、蹄の表面には釘が見えています。

諦壁から出る釘装蹄センターブログ

蹄鉄は接地して体重のかかる部分(蹄負面:ていふめん)を金属で保護することで、削れや欠損を防止しています。雪や砂地などの地面が柔らかいところでは蹄が沈み、裏の出っ張り(蹄叉)部分も足跡として残ります。

JRAのロゴは馬の足跡
JRAのロゴは馬の足跡を意匠化したもの。U字の部分は蹄鉄を、馬の頸から頭の部分は、くさび形に出っ張っている蹄叉にあたる。

蹄鉄用滑り止めスパイク(クランポン)

滑りやすい雪道や芝の上でも安定して走れるよう、蹄鉄にボルト上の鋲を取り付け、蹄鉄をスパイクシューズ化することもあります。

タイヤなどでも使わているスタッド(stud:鋲)によりグリップを上げることで滑り止めとなります。日本ではクランポン(Crampons)と呼ばれています(クランポン – うまより blog)。

蹄鉄そのものにスパイク機能のある鉄臍蹄鉄(てっさいていてつ)という特殊な蹄鉄もあります。

さまざまな蹄鉄の形状は、名古屋競馬のウェブサイトに詳しく掲載されています。

参考 <br /> 蹄鉄の種類名古屋競馬

金属を使わない蹄鉄

素材に金属(非鉄金属含む)を使わず、靴のように履かせるタイプの蹄鉄もあります。

必要な時だけ履かせる文字通りの馬の靴(Horseshoe)で、馬用のランニングシューズ・ランニングブーツとも呼ばれています。

馬の蹄は伸縮することで血液を送るポンプの役割もあるため、接地時に微妙な歪みが生じています。底面がフレキシブルなら小さな石や段差を吸収できるメリットがあります。

蹄全体が覆われるため、挫跖(ざせき)の予防も期待できます。

Megasus Horserunners

魔除け・開運アイテムとしての蹄鉄

クローバー幸運の蹄鉄

馬蹄(馬用の蹄鉄)は古来から魔除けや幸運をもたらすお守りと考えられていました。

蹄鉄を玄関に蹄鉄を打ち付けておけば、魔物が入っていくるのを防ぐ。あるいは幸運が舞い込むといった言い伝えがあります。

蹄鉄を飾る向きはU方向(上向き)がいいとする地域もあれば、逆に∩がいいとする場所もあり、定説はないようです。

上を向いているUがいいとする地域では、入ってきた幸運を下に漏らさず貯めるため。逆に下向き∩に設置するのがいいとする理由は、訪れた人に幸運を与えるという考え方による。どちらがいいかはその人次第と言えます。

蹄鉄が幸運のアイテムとして捉えられるようになった起源は諸説あります。

1つはケルト族が森に追いやった妖精たちによる悪さを防ぐためという説。妖精というとピクシーのようなファンシーな存在を思い起こしがちですが、エルフや邪悪なゴブリンも妖精に含まれています。

邪悪な妖精は牛のミルクを出さなくしたり、鶏のたまごを産まなくする呪文を唱えるとして嫌われていました。人間に不幸をもたらす妖精たちは、かつて金属製の武器により倒されたことから、鉄を嫌うと考えられていたようです。

アイルランドのお祭りである聖パトリックの祝日では、蹄鉄もアイテムとして登場します。

別の説には、鍛冶屋が悪魔から馬の蹄鉄を修理するよう頼まれた際に悪魔の足に蹄鉄を打ち付けて、悪さをしないよう約束させたというものもあります。

悪魔は扉に蹄鉄が留められているときは絶対中に入らないと約束して、ようやく蹄鉄を取り外してもらいます。この約束によって、悪魔は蹄鉄が飾ってあるときは来なくなり、魔よけとなったと考えられています。

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