ガルフストリームパーク競馬場の寄付金集めを参考にすると、こういう結論になる

有名な引退馬が行方不明になると、必ずと言っていいほどJRAがなんとかしろという声が上がります。アメリカのガルフストリームパーク競馬場での払い戻し時に、一部を寄付できる仕組みがある、といった「情報」を提供する人も居ます。

しかし不思議なことに、その金がどこに行くのか、どのように活用されているのか、といった「情報」は書かれていません。その金がどのように用いられているのか、なぜその方式が成立したのかの部分こそが参考になるはずなのに、その点を解説する人は皆無です。本気でなんとかしたいのなら、どういう仕組でどう活用されているのかが重要なはずです。

「現状がこうだからここをこうすべき」というなら聞く意味もありますが、ただ「助けろ」では熱が冷めたらそれで終わりなのが目に見えている。アメリカの競馬場で寄付された金はどこに行くのか、どのような枠組で運営されているのかについて、なぜ調べて説明しないのか。なかには解説している人もいるかもしれませんが、私の目には入りません。

「なんとかしたい」と思うのであれば、労を厭わず調べて、情報を共有したらいいと思いますよ。

Gulfstream Parkの寄付金の行き先

Gulfstream Parkの寄付選択画面には「Thoroughbred Aftercare」に寄付されると書かれています。この点については問い合わせていないので不明ですが、ガルフストリームパークで開催されるペガサスワールドカップの賞金の2%も”THOROUGHBRED AFTERCARE ALLIANCE”(TAA)に寄付していることから、おそらくTAAに渡っているのでしょう。

寄付先となる”THOROUGHBRED AFTERCARE ALLIANCE”は、引退馬を支援する団体への認定・助成を行っている団体で、2020年時点で 74の組織、160施設を対象としています。交付額はこちら。アメリカの引退馬余生牧場「Old Friends」もここの認定を受けています。

TAAについては名前しか知らないので少し調べたところ、資金の源泉は寄付とスポンサーとなっています。

TAAの目標はというと、競馬産業の参加者(ステークホルダー)からお金を少しずつ集めること、と書いています。種付け料とかオークションであるとか、競馬場、レース賞金などから数%集めたいということです。具体的な組織名はこちらのページに掲載されています

さて、競馬産業の関係者には生産者も馬主も含まれます。「ガルフストリームパークのような、ファンが寄付しやすくする取り組みを日本でも!」という生産者や馬主は、まずは自らが「売額からこれだけ寄付する」「賞金からこれだけ出す」と声を上げてみたらいいんじゃないですか?集まった資金を分配するための組織づくりは生産者側では難しいから、JRAに組織を作ってと頼むという手はあります。

引退馬支援をするJRAの「引退競走馬の養老・余生等を支援する事業」は、以前は独立した組織を設立する案もあったと記憶しているので不可能ではないでしょう。

イギリスの引退サラブレッド支援チャリティRoR(Retraining of Racehorses)の設立にはBHA(イギリス競馬統括機構)の前身が関わってわっています。JRAから独立した団体であれば、「畜産振興」から離れた施策も行えます。RoRの設立は2000年と比較的最近なので、産業構造は違えど参考モデルになるでしょう。

その組織に馬主や生産者に加え、JRAやNARも助成することにすれば、独立性も保てますよね。

競馬産業関係者が「引退馬支援」がいいことで積極的にすべきだと思うのなら、「我々」は身銭を切るから、みんなも力を分けてくれ!というといいんじゃないですか?

「福祉」向上イコール「処分なし」ではないのですから、独立した団体にしないとややこしくなりますよ。