海外の競馬における鞭使用規制

日本語ソースがあるものは引用させてもらっています。ペナルティはおいおい埋めていきます。罰則がゆるく違反がなくならなかった国では、厳罰化が行われてきた経緯があります(揺り返しもある)。

国際競馬統括機関連盟の鞭使用ガイドライン

国際的な鞭の使用について、国際競馬統括機関連盟(IFHA)がガイドラインを出しています。「ガイドライン」なので具体的な数字は示されておらず、こまかいルール制定は主催者に委ねられています。

鞭の種類はパッドつき・衝撃吸収タイプのもののみが許されています。

ガイドラインの提示する鞭の使用の制限

  1. 馬に怪我を負わせるほどの使用
  2. 肩より高い位置に腕を上げて振り下ろしての使用
  3. 過度に強い鞭の使用
  4. 鞭に反応しない馬への使用
  5. 勝利または着順が明らかになった後の使用
  6. 勝利が明らか、もしくは最高の着順が決した後の不要な鞭の使用
  7. 入線後の使用
  8. 脾腹への鞭の使用
  9. 過度の使用
  10. 頭部または頭部付近への使用
  11. (特別な状況でない場合の)鞍前方への逆鞭の使用

International Agreement – IFHA

4,5,6はほぼ同じ内容です。

国ごとの鞭使用ルール

イギリス

平地7回、障害8回

Regulatory – Use of the whip | The Professional Jockeys Association

フランス

1レースあたり6回

鞭使用ルールの初犯には、これまでと同じく過怠金75ユーロ(約9,000円)が科される。しかし、その後6ヵ月以内に2度目の軽度の違反(鞭使用可能回数を2回まで超過した場合と定義)を犯した場合、罰則はこれまでの過怠金250ユーロ(約3万円)から1日騎乗停止処分に強化される。

フランスにおける鞭使用可能回数、6回までに削減 – ジャパン・スタッドブック・インターナショナル

厳罰化は違反が多い時に行われることが多いが、フランスの罰則強化はルール違反が多いためではないとのこと。

ドイツ

5回まで

Rule Changes and Announcements

ノルウェー

ノルウェーは人道的理由から競馬での鞭の使用を1982年に禁止

 

厳しい処分の裏にはそれなりの経緯がある

罰金制では、賞金>罰金 となるレースでは、罰金覚悟で鞭を使うケースが生じます。

どうせペナルティを受けるのならと、むしろ使いまくったケースもあります。

罰金では抑止にならないこともあるため、厳罰化に進んだことも。。

When the pressure is on, some riders breach the whip rules in horse racing

鞭規制の論拠をきちんと報じない日本のメディア

2017年4月より、日本でも海外と同じくパッド入りの鞭の使用が義務付けられたとは多くのメディアで報じられました。

普通に考えれば、従来のものより痛みは少ないだろうとは予想できます。しかし同時に「パッド入りの鞭は痛くないのか?」という疑問が湧くと思うのですが、目にした限りでは、そこを掘り下げているメディアは皆無。

鞭の使用制限には3つの論点があります。

  1. 鞭で馬は痛みを感じているか
  2. レースに鞭は必要なのか
  3. 動物の福祉の観点から社会的に受容できる行為か

海外ではそれぞれの観点から検証されており、鞭の使い方についても議論されています。そしてパッド付きの鞭でも、使い方によっては痛いだろうという見解もあります。

逆に「(従来の鞭でもレース中は)痛み、感じなかったんじゃない?」という研究もあります。

ようするに現象面から観察するしかないため、馬に直接聞けるようにならないと事実は分からないという現実があります。

しかし海外では紆余曲折がありながらも規制が強化されています。

痛みを感じている「かもしれない」のであれば「その痛みを減らしてやりたい」ことが理由の第一に上げられます。

さらに「レースに鞭は必要なのか」と「鞭の使用は現代社会に受容できる行為か」の2つの要素があります。今の日本では、犬猫の福祉は充実しており、飼い主の義務が明文化されています。

同じことが馬でも生じていると考えれば分かりやすいでしょう。犬猫には手厚い福祉を、馬は経済動物だから鞭を使ってもいいという考え方もあります。

鞭の使用を良しとする考え方もあるため、海外では鞭の使用に同意する人としない人の割合や、鞭の使用が禁じられたらどうするか、といった調査もなされています。

 

孫引きになりますが、トルコで用いられているセンサー付きの鞭 “Whipchip” は、過剰な鞭の使用がきっかけとなって導入されています。

トルコでは、ある見習騎手が、疲れ切った馬に過剰に鞭を使用し転倒事故を招いた。この事故がきっかけとなり、”今後鞭をどのように使用していくか”ということについて議論が起きたのである。トルコジョッキークラブのアイベガム・カンボラト(Aybegüm Canbolat)氏は、この新しい鞭が競走馬の安全・健康を大幅に改善すると信じている。

使用回数と打つ強度を測定する革新的な鞭(トルコ)-ジャパン・スタッドブック・インターナショナル

 

鞭の使用をなくせば競馬にまつわる虐待のイメージがなくなり、ファンがより増えると考えている人もいます(アメリカの人だから日本にあてはまるかは別問題)。

 

鞭の使用規制は「馬の福祉」の一言で片付けられる話ではなく、競馬がギャンブルだから鞭の使用も致し方ないという話でもない。それらが渾然となった議題です。それ故に「動物の扱い」という人間のエゴとの線引が必要となります。

 

競馬がギャンブルでない国はドバイのような例外的な国だけ。程度の差はあれど、主催者がパリミュチュエル方式で賞金の原資を確保している国なら、競馬はギャンブルによって成り立っていると言えます。油断騎乗があるから鞭の使用に歯止めがかけられないのであれば、なぜ海外では制限が強化されているのか、日本にはそぐわないから海外よりもゆるくするのか「きちんとした議論」をすべきでしょう。

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