日本の騎馬警官

日本の警察騎馬隊

日本には警察組織の騎馬隊が3隊あります。

ひとつは皇居の警備と皇室の警護を担う皇宮警察、ひとつは警視庁の騎馬隊、そして1994年に京都府警に創設された平安騎馬隊。いずれもパレードの先導や外賓の送迎、交通安全の啓発活動といったPRや儀仗が主となっています。

 

皇宮警察騎馬隊

皇室関連の儀仗のための騎馬隊。信任状捧呈式におもむく特命全権大使や特命全権公使(いわゆる大使や公使)の送迎馬車の護衛の任で知られています。

信任状捧呈式の送迎に用いられる儀装馬車を運用するのは皇宮警察ではなく、宮内庁の車馬課で別組織。

 

皇宮警察の正式名称は「皇宮警察本部」。皇宮警察本部には警察庁事務官と警察庁技官もいますが、警官として目にするのは皇宮警察本部で採用された「皇宮護衛官」。皇宮護衛官皇室関係の施設の警備や、皇室の警護を担っています。

皇宮警察騎馬隊隊員は意外なことに専任ではなく、通常は皇宮護衛官として皇室ファミリーの警護の任務に就いており、訓練はその合間を縫って行っているようです。

厩舎も馬場も皇居敷地内にあります。所属する馬はほとんどがサラブレッド。

皇宮警察本部 皇宮護衛官(騎馬隊)特集 – 皇居外苑

 

警視庁騎馬隊

警視庁騎馬隊 via Wikimedia

警視庁騎馬隊が正式発足したのは明治36年(1903年)と、100年以上の歴史を誇ります。所属は交通部第三方面交通機動隊。

明治7年2月当時、警視庁と内務省との間の文書往復や伝令勤務を行っていたのが始まりでした。
その後、明治36年9月に欧州の警察騎馬隊を参考として、警察官15名・馬15頭で正式に騎馬隊が発足しました。

発足当時は他の地域にも騎馬警官や騎馬憲兵がおり、欧米の騎馬隊のような実務にあたっていたようです。

現在では交通安全教育やパレードなど、どちらかといえば広報的な色合いが強いようです。まれに警備的な役割をすることもあり、また皇宮警察本部騎馬隊と共に、信任状捧呈式の護衛の任にあたっています。

もともと馬事公苑の施設を利用していましたが、2017年末より2020年オリンピックに向けた改修に入り、現在は府中のJRA東京競馬場を本拠地としています。

地域貢献の一環として、騎馬警官による府中の小学校の通学路の見守りをしています。

騎馬隊見守る入学の日 – 朝日新聞

 

平安騎馬隊

京都時代まつりの騎馬警官2009 via Wikimedia

京都府警の騎馬隊、平安騎馬隊の歴史は新しく、発足したのは1995年のこと。騎馬隊そのものは戦前からありましたが、車の普及に伴い解体されました。

現在の騎馬隊が創設された理由は「府民と警察を結ぶかけはし」となること。所属は地域課で、子供向けの厩舎見学や騎乗体験も行っています。

平安騎馬隊は「平安遷都1200年」を記念し、府民と警察を結ぶかけはしとして、平成6年に創設されました。

交通安全啓発の他、観光地の警らやパレードの先導なども行っています。葵祭で狩衣に烏帽子姿を見たことがある人もいることと思います。

馬とのふれあいの場を提供する活動にも積極的。出動予定も掲載されているので、馬に乗った警察官を見たい!という人はチェックしてみてください。

 

警察騎馬隊の隊馬

日本の騎馬警官の乗っている馬のほとんどは元競走馬。つまりサラブレッド。

競走馬から乗用馬へのトレーニングには時間がかかりますが、騎馬隊の隊馬への転身には一般的な乗用馬としてのトレーニングの他に、街中のいたる所にある刺激に慣らす必要もあります。

都会の喧騒に慣れてしまっている私たちにはどうということのない音や光も、馬にとっては刺激になります。警察騎馬隊はそんな街中で活動をするわけですから、音と光とバタつくものに毎回ビクついていては任務になりません。

警視庁騎馬隊のサイトには、訓練の内容が掲載されています。

 

刺激に慣れるまでの期間には馬の個性が大きく影響し、訓練は長ければ1年にも及ぶこともあるそうです。

 

適性があると見込まれた馬でも、任務に加わるまでには長期間にわたる辛抱強い訓練が必要なんですね。

 

馬のソソウの後始末

馬は走りながらでも糞をすることができます。しっぽが上がったら大きいのをする前触れ。

馬車最盛期だった19世紀末のロンドンでは、このままのペースで馬車が増えれば、遠くない将来には馬糞で道が埋もれてしまうと危機感を募らせていました。

自動車が一般化したために数十年としないうちに馬車は廃れ、ロンドンの道が馬糞でいっぱいになるという予想は杞憂に終わりました。

馬糞で道が埋もれることはありませんでしたが、馬が街中を歩けば、当然ながら糞の問題は生じます。ただ、問題となるのは「問題視された時」。気に止める人がいなければ「問題」にはなりません。

そのため海外の騎馬警官は馬糞はほったらかしが多いようです(もちろん直接回収するケースもあれば、通常の清掃で処理されることもあります)。

そのままにしているのを問題視する人はいますが、そう大問題としても捉えられていません。アメリカの警察のサイトで、(馬糞は)要請があれば拾うけど…としていたのを見かけたこともあります。

 

対して日本はというと、騎馬警官に随行の隊員や職員が拾っているようです。

日本信任状捧呈式の送迎馬車の後も

パレードの最中も

拾ってます。

平安騎馬隊も通常の任務でも同じように回収しているとのこと。律儀ですね。

「犬の糞の回収を義務付けておいて、もっと大きな馬の糞(ボロと呼びます)は放置か!」と言われかねないし、環境・美意識からも望ましいのでしょう。

警らを騎馬警官だけで行っていないから可能という部分もあるのでしょう。

バッキンガム宮殿騎馬警官青鹿毛騎馬警官 – 海外の警備活動で馬が用いられるわけ

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