『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』
競馬に興味がない人にも読んでほしい
育成牧場を舞台に、普通の高校生が馬の育成にはまっていく日常を描いた傑作。
馬の種付けから馴致競走馬としてのデビューまでの流れを時系列で追っているので、一通り読めば競走馬のサイクルが理解できるようになる。牧場の生産馬がみな活躍するというご都合主義とはいえ、生産者、馬主、調教師、騎手それぞれの視点も描かれているので、競馬には興味がないという人にも読んでほしい一冊。
2001年以前の作品のため馬齢が数え。1ひく必要あり。
北海道ツーリング中に行倒れてしまった主人公久世俊平が、助けられた渡会牧場で競走馬生産の魅力に取りつかれ、高校も中退し自らの生きる道を見出す物語。
牧場生産馬がレースに勝つ喜びと、商品・経済動物である競走馬を扱うジレンマを抱えつつも、馬の生産にはまり込む。
ラブコメらしく俊平、大牧場の子息である悟、全員じゃじゃ馬の渡会牧場4姉妹の絡み合う恋模様も丁寧に描かれる。
(青春の門 + 優駿) x ラブコメ ÷ 少年サンデー = 青春大河ロマン
とにかく面白いの一言。筆者が競馬に興味を持ったのは友人宅にあったこのコミックを手にしたことがきっかけ。ジャンルとしてはラブコメになるが、全編を通して読むと牧場を舞台とした青春小説と呼ぶほうがしっくりくる作品。
「競馬?興味ないよ?」という方こそ、正統派青春コミックとして読んでみてください。
Jumping ジャンピング
大学馬術部を舞台としたコミック
馬を題材にしたコミックのほとんどが競馬モノを占め、乗馬・馬術ものは非常に少ない。長期連載になる作品はさらに珍しい。
馬術部のある大学は少なくないのに、なぜかマイナー感がぬぐえない不思議 。そんなマイナー感のぬぐえない大学馬術部を舞台としたのが Jumping。
ヒロインの蘭の要領の悪さと自己評価が低い理由として、学習障害の一つ、書字障害を匂わせる描写が多い。そんな蘭と馬術部の面々と馬たちと過ごす日々が描かれている。
勉強が苦手で大学受験に失敗したヒロイン蘭は引きこもってしまう。そんな中、青森に進学した友達、小百合の「青森で一緒に住まないか」という誘いに応じて大学を訪れる。そこで出会った暴れ馬「津軽」と馬術部員との交流を通して、ふたたび受験を決意。
馬術部の面々の協力もあり合格し、馬術部の一員としての生活が始まる。
馬術はコミックにしづらいことを実感
蘭の描写には発達障害を匂わせるものが多く、蘭の親友である小百合もそれに気づいている言動をしている。
人を乗せなくなった「津軽」の気持ちを蘭が読み取れているのは、テンプル・グランディンのような動物の視点をもっているからとも読み取れる。
「動物と付き合うなら動物の側の立場に立つべき」とは言われるけれど、世界の認識の仕方・見え方が違うのだから大変難しい。概念で把握する人間の側の論理に立ちがち。
要領が悪い反面、観察力が鋭く他人の気持ちに敏感な蘭は、動物と共有する世界観が多いのかもしれない。人間の認識する世界と、動物の見ている世界の違いを気づかせてくれる貴重な本ではあるものの、舞台が馬術部ゆえの難しさも感じられる。
- 直接勝負がある競馬とは違い、馬術競技は個別で行うため盛り上げが難しい
- 初心者の段階から乗り方を描いても、経験者が少ないためあるあるが理解されにくい
- 障害飛越も躍動感が出しにくい
馬術部を舞台とするコミックは難しいよね、ということを実感させられもします。
こんな理由で絵的に見せるのが難しいんでしょうね。「銀の匙 Silver Spoon」くらいの扱いがいいのかも。
馬を介した「アニマルセラピー」の一種と言えるのかもしれないけれど、そんなことは考えず、ふつうの青春モノとして楽しむのが吉。面白いです。
元競走馬のおれっち
競走馬から乗用馬へ第二の馬生
良血のサラブレッドの元競走馬、『おれっち』を主人公としたコミック。結果が出せず、乗馬クラブでの第二の馬生を生きることを余儀なくされた馬の気持ちをコミカルに描く。
シリーズ化されており競走馬時代のおれっちも扱われている。
「元競走馬のおれっち」は、一部を著者おがわじゅりさんのブログで無料で公開されています。
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ゆるい空気の動物コミック好き&乗馬経験者向け。過度の擬人化が苦手なら合わないかも。
サラブレッドと暮らしています。
厩務員の日常をうかがい知ることができる貴重な一冊
地方競馬・園田競馬場の厩務員によるコミックエッセイ。
JRA中央競馬の厩務員についてはメディアでも取り上げられ、競馬を題材としたコミックでもしばしば登場する。しかしどんな気持ちで仕事をしているのかよくわからない。地方競馬となればなおのこと。
そんな地方競馬で馬の世話をする厩務員の、知られざる日常と気持ちが淡々と描かれる。
動物を扱う、ままならぬ日常
もっとも長く馬に触れ、勝つ喜びだけでなく、引退・予後不良による現実にも直面する厩務員の馬の見方が分かる貴重な一冊。
厩務員にとって競走馬を調教してレースに送り出すのは日常であり、生活の糧。どこまで「赤裸々に」語られているのかは分からないものの、なかなか知ることができない世界が描かれています。
白星のギャロップ
JRA競馬学校の騎手育成過程を描いた傑作
JRA競馬学校の騎手育成過程を舞台に、生徒同士の確執や成長を克明に描く。
競馬学校はメディアでもコミックでも扱われることはあっても、毎年5~10名しか卒業しない少人数の生活となると想像もつかない。騎手の書いたエッセイなどからうかがい知るのが関の山。
白星のギャロップでは、少人数故の感情の行き違いや切磋琢磨がみずみずしく描写される。
少年サンデーの系譜らしいすっきりした線とコマ運びはモンキーターンを思わせる。
JRA乗馬苑の「乗馬スポーツ少年団」で将来を期待される森颯太は、母との二人暮らし。2年前に倒れて以後、ひきこもってしまった母を助け生活を支えていたが、バイトから帰ると母は亡くなくなっていた。そして颯太の父が、母がいつも応援していたリーディングジョッキーの藤宮将二であることを知る。
颯太は母を捨てた藤宮への復讐のため、リーディングトップの座から降ろすことを胸に秘め競馬学校に入学する。
競馬学校入学式で藤宮を目にすると、トップを目指すことを宣言する。
少年漫画王道の面白さ
馬術競技と競馬での騎乗技術の違いや、成長期の体重管理の厳しさなどが丁寧に描かれるとともに、父親への復讐、切磋琢磨など、少年漫画の王道を行く面白さがちりばめられています。
日常の厩務や授業風景などもう少し掘り下げて欲しいところはあるものの、とにかく面白い。
ギャグ要素が少なくラブコメでもないストイックなため爆発的な人気は期待できませんが、一読の価値あり。