馬を用いた競技といえば、競馬、オリンピックのヨーロピアン(イングリッシュ)馬術、カウボーイのウエスタン馬術が思い浮かぶが、その他にもさまざまなバリエーションがある。
競馬
王様のスポーツとも呼ばれる競馬は近代競馬とも呼ばれ、16世紀ごろのイングランドで始まったとされる(時期は捉え方によって変わる)。
スポーツの語源は古フランス語の「desporter」「(仕事や義務でない)気晴らしをする、楽しむ」。肉体運動を伴った勝負という意味は1500年代から見られるが、冗談という意味も同時期からある。
スポーツの意味は時代と共に変化しているが、「王様のスポーツ」の語は「王様の暇つぶし」、あるいは「娯楽」という意味ともとれる。
競馬のために作られている「早さのみを追い求めるサラブレッド」は近代競馬の申し子とも言える。
現代に連なるサラブレッドの競馬は、18世紀中頃にルールが定まってきて、三冠レースなどは19世紀前半に成立している。
「スポーツ」の定義にもよるが、サッカーや野球などの、いわゆる「競技スポーツ」は19世紀後半に成立した。競馬はその前から、現代的なルールによる「スポーツ」として楽しまれていたとも考えられる。
競馬はもともとは馬主がお金を出し合って賞金に当てるステークスレースだったが、現代では主催者が賞金を提供する方式がほとんど。
レースの賞金の原資としては、そのレースのためのスポンサーを募るケースと、集まった賭け金の一部を賞金に充てる二通りの方法がある。
日本で言えば胴元である JRA が勝馬投票券という形でお金を集め、その中から賞金が充当される。この方式をパリミュチュエル方式という。
平地競争
サラブレッドによるギャロップ(襲歩)レース。日本で競馬と言えばこれを思い浮かべる人がほとんど。画像は空馬(人が乗っているべきなのに乗っていない状態、空馬)。
障害競走
サラブレッドによるギャロップ(襲歩)レース。いわゆる障害レース。ヨーロッパでは障害競走の人気が高い。
イギリスでもっとも注目される競馬のレースは障害のグランドナショナル。近年では安全性が向上しているが、現在もなお、もっとも過酷とされるレースである。推計では数億人単位での視聴者がいるとされる。
繋駕速歩競走(けいがそくほきょうそう、けいがはやあしきょうそう)
繋駕速歩競走(けいがはやあしきょうそう)は、サラブレッドレースとは異なる歩法、速歩(はやあし)によるレース。ハーネスレースとも。
一人乗り二輪馬車(サルキー)を曳かせるレース。騎手はジョッキーではなくドライバーと呼ばれる。
トロッター・ペーサー(2節の歩法)で別個のレース体系になっている。駈け足になったらペースを落として外枠に移動させ、歩法を戻さなければレースに復帰できない。
推進力にムラが生じる駆足や襲歩(ギャロップ)とは違い、速歩は車両を引くのに適している。
ハーネスレースの競走馬は現役期間が長いのが特徴。
馬券的に妙味があるため、イギリス・アイルランドを除くヨーロッパやオーストラリア、カナダなど、サラブレッドのレースをしのぐ人気を誇る国も多い。
源流はベンハーのチャリオットレース(戦車競走)のような競技。下の動画は狭いが、古代ローマ時代のキルクス(戦車競技場)跡「キルクス・マクシムス」はの入場人員は、推定30万人とも言われる。
「パンとサーカス」のサーカスは、戦車競技場「キルクス」を指している。ローマ時代もすごい人気だったらしい。
騎乗速歩
トロッター・ペーサー(2節の歩法)によるレース。
ハーネスレースとは異なり、トロッターに騎乗してレースを行う。
ばんえい競走
北海道・帯広市のみで行われている、450kgのソリ本体に負担重量を乗せ、最大で1トン近いソリを引くレース。ばんえいは輓曳(運搬用ソリや農耕具などをひく)からきている。
起源は木材を運び出していた馬の力比べとされており、スピード競争とは趣が異なる。
コースは大小二つの障害となる坂を含んでおり、特に難関の第二障害は見どころとなっている。
さらにゴール付近はやや勾配がつけられており、入線(ゴール判定)はソリの後端を基準とするため、最後まで勝負が分からない。
馬の品種は800kg ~ 1トン以上の大型のばん系種が用いられる。
馬術競技
馬術競技は大な分類としてブリティッシュとウエスタンに分けられる。馬の騎乗技術を競うものだが、馬車や、馬上で行う体操競技のような軽乗(vaulting)競技もある。
ブリティッシュ
イングリッシュとかヨーロピアンなどとも呼ばれる。日本で多いのはこれ。
- 馬場馬術(ドレッサージュ)
- 障害飛越(ショウジャンピング)
- 総合馬術(イベンティング)
オリンピックでは上記三競技が行われる。総合馬術(Eventing)は3日間かけて行うことから「3 Day Event」とも呼ばれる。
ウエスタン
カウボーイの腕比べから派生。
ワイルドで派手なので、いきなり観ても楽しい。
ポロ
ポロシャツでおなじみの、馬上でパターのようなスティックでボールを打って得点を競うゲーム。
対戦は4対4のチームで行われ、サッカーのピッチの9倍の面積のフィールドを使用する(屋内では大幅に狭まる)。馬の運動量が多いため、1ラウンド(チャッカーと呼ばれる)ごとに馬を変える必要がある。そのため最低でも2頭の馬がいないと競技に参加できない。
ボールを相手ゴールに入れれば得点となる。
馬の機敏性、スピード、鞍上の指示への反応など、馬の能力を生かした競技と言える。その一方接触のリスクもあるため、ラインどりもルールで定められている。
ポロに用いる馬はポロポニーと呼ばれるが、147cm 以下のいわゆる「ポニー」ではない。かつてはポロに用いられる馬の体高は142cmや147cmに制限されており、文字通りポニーが用いられていたが、現在では制限がなくなっている。そのため普通の馬、サラブレッドも用いられる。品種の指定はない。
ポロは紳士のスポーツと呼ばれるが、運動量は多く、しばしば接触も発生するラフさもある。
パブリックスクール(寄宿制名門校)がスポーツを重視していることもあるためか、ラグビーしかりポロしかり、イギリスの紳士は激しいスポーツも好むもよう。
ヘンリー英王子のポロでの落馬はネタに。
ホースボール
ホースボールは騎乗者がボールを運ぶゲーム。ポロをハンドボールにした感じ。
おそらく『ハリーポッター』シリーズに出てくる「クィディッチ」のモデル。