歩く時の足の運び方を歩法(ほほう)、歩き方を歩様(ほよう)と言います。
歩法は肢を動かす順番と動かし方のことで、足運びとも呼ばれます。馬の代表的な歩法には、常歩(なみあし)< 速歩(はやあし) < 駈足(かけあし) < 襲歩(しゅうほ)の4種類があります。右に行くほど早くなりますが、駈歩でも早足よりゆっくり走ることもできます。
歩法を人間で考えると、右足と右手を同時に出す「なんば歩き」がそれに当たります。二本足の人間の歩法は限られますが、4本足の動物では組み合わせが増える、というわけです。
一方の歩様は歩く”さま”のこと。フォームや歩き方と言うほうが分かりやすいかもしれません。歩く姿勢がよかったり悪かったりを表す言葉です。跛行(はこう)は肢をかばいながら歩いているなど、歩様に異常がある状態のこと。人間の場合は歩様の代わりに「歩容」が使われるようです。
場合によっては足運び(歩法)のことを歩様と呼ぶこともあって混乱する人もいるようですが、どちらも馬の歩き方・走り方のことです。
二足歩行の人間なら足を右、左の順に出すのが普通なので意識することはありませんが、4本足の動物はさまざまな足運びがあります。代表的な馬の歩き方、走り方としては次の四つがあります。
- 常歩(なみあし)
- 速歩(はやあし)
- 駈足(かけあし)
- 襲歩(しゅうほ)
上が一番ゆっくりで、下にいくほど最高速度が上がります。
常歩は馬が歩いている状態。速歩はパカパカという音を立てる走り方で、馬車馬がよくしています。駈歩はパカラッパカラッ、暴れん坊将軍のオープニングでの走り方。襲歩は競馬で見られる、馬の全力の走り方のことです。
常歩
常歩(なみあし)は馬の歩くときの足運びです。頭を上下に動かしてバランスを保ちながら歩きます。2本または3本の肢が地面についており、4本の肢がそれぞれ異なるタイミングで着地・離地する4節の歩法です。
- 左後肢
- 左前肢
- 右後肢
- 右前肢
速歩
速歩(はやあし)は、常歩よりも早い歩法です。カッポカッポという音を立てている街中で走る馬車馬の走り方を想像すると分かりやすいと思います。
速歩では前肢と後肢が二本セットでほぼ同時に着地・離地する2節になります。右前肢と左後肢、左前肢と右後肢のセットで動くため、同じ側の前脚と後肢が離れたり近づいたりします。
速歩は上下の反動が大きいため、騎乗者が鞍の上で立ったり座ったりすることで力を逃がす乗り方があります。
この速歩は斜対歩(しゃたいほ)と呼ばれます。「速歩」という走り方にわざわざ名前をつけるということは?
そう、速歩にはもう一種類あるのです。
側対歩
上で紹介した速歩は一般的に目にする斜対歩です。速歩にはもうひとつ、側対歩(そくたいほ)という速歩もあります。
こちらは同じ側の前肢と後肢がセットになって同時に動く足運びとなっています。
道産子のような一部の品種では、遺伝的に側対歩が基本となる馬もいます。生まれながらに側対歩な馬もいるのですが、遺伝子が一つ違うだけで側対歩にならないそうです。
キリンのように足が長い動物は側対歩であることが多いそうです。同じ側の前肢と後肢が近づく斜対歩では、長い足では前脚と後肢がぶつかってしまうからではないか、といわれています。
日本で競馬と言うとサラブレッドのレースを思い浮かべますが、欧米では速歩が得意な馬を使ったレースもあります。
駈歩
駈歩(かけあし)は暴れん坊将軍のオープニングの走り方…と説明していたのですが、ビデオ探して見てたら波打ち際は襲歩してますね。
それはさておき、パカラッパカラッと効果音が入っているように、駈足は3節の歩法です。4本肢なのに3拍ということは、二本の肢はほぼ同時に着地・離地しているタイミングがあります。また、肢が地面についていない瞬間があります。
駈足は速歩や並足とは異なり非対称な歩法であるため手前(てまえ)があり、手前と反対(反手前)の後肢が推進力を生むため、手前方向に進みやすくなります。
- 右後肢
- 左後肢・右前肢(三本が接地する)
- 左前肢
襲歩
襲歩(しゅうほ)は競馬の走り方と言えば分かりやすいでしょう。英語で言えばギャロップです。
馬が全力で走るときの4節の歩法で、体をいっぱいに伸ばして大きく動きます。
駈足と同じく非対称な歩法で手前があり、反手前の後足が推進力を多く生みます。
- 右後肢
- 左後肢
- 右前肢
- 左前肢
こちらの動画は分かりやすいです。
なぜ競走馬はゴール前の直線でヨレるのか『馬はなぜ走るのか』競馬が好きでない人にも読んで欲しい一冊