カジノを含む統合型リゾート施設IRにまつわる贈収賄スキャンダルから、カジノ設置への反対の声が高まっています。公営競技にパチンコに宝くじと、ギャンブルが繁盛している現状で、そこまで騒ぐ必要があるのか?という気もします。宝くじを一旦廃止するのが先でね?と思っています。
それはさておき、筆者の関心はもっぱらギャンブル依存対策にあります。IR法案に付随する形で、行政や事業者のギャンブル依存対策を定めた「ギャンブル等依存症対策基本法」が2018年に制定されました。この中では、事業者に対してギャンブル依存の予防の努力が義務付けられています。
第七条 ギャンブル等の実施に係る事業のうちギャンブル等依存症の発症、進行及び再発に影響を及ぼす事業を行う者(第十五条及び第三十三条第二項において「関係事業者」という。)は、国及び地方公共団体が実施するギャンブル等依存症対策に協力するとともに、その事業活動を行うに当たって、ギャンブル等依存症の予防等(発症、進行及び再発の防止をいう。以下同じ。)に配慮するよう努めなければならない。
刑法で禁じられている賭博を主催する事業者が、ギャンブル依存防止に最大限配慮するのは当然のことです。海外で政府の認可を受けたブックメーカーには、各ページの下に相談先や回復支援の組織への誘導が目につくよう設置されているところもあります。
その一方、日本の公営競技がどのようにギャンブル依存症の情報提供をしているかというと…きちんと向き合っているのは中央競馬のみ。
その他の競技では、ギャンブル依存情報へのリンクが目立つところに設置しているのはわずか。多くは「程よく楽しむ大人の遊び」という意味不明のリンク先がギャンブル依存に関する情報となっています。
自治体が施行する公営競技ならば、営利企業よりよりも積極的な依存対策への情報を提供するのが当たり前なのです。なにしろ依存者が増えたら、それはそのまま行政の負担になるのですから。それにも拘らず、対策はおざなりとしか言いようがない状態です。
JRAのギャンブル依存対策は明確で一目瞭然
上の画像はパソコンでJRAにアクセスすると表示されるトップページ下部。「JRAのギャンブル等依存症対策」の文言が書かれています。各ページの下にも「馬券は20歳になってから」と「ギャンブル依存症対策」が並んで表示されます。
すべてのページかは分かりませんが、投票とは無関係なページでも表示されます。
下の画像はスマホページ。こちらも分かりやすく表示されています。
文言や表示ページは時期によって若干異なるかもしれません。少し前は下の画像のように「ギャンブル障害への対応」でした。
下に長いページはともかく、JRAのウェブサイトを見ていれば必ず目に付きます。これだけ明確に書かれていれば、意識しなくても頭に残ります。
JRAって真面目だわ、というのが素直な感想です。言われたからやるのではなく、やるべきことをやっている。
社会的責任に向き合っています。もっともこれが当たり前なんですけどね。
海外のブックメーカーのサイトだと?
アイルランドのブックメーカーPADDYPOWERのページ下部。ブックメーカーは予め賭け率を提示して、利用者に賭けを促すサービス。
緑の「More details」の先のページには、人の生活を壊すような賭けは望んでいないこと、助けが必要な人をサポートすることに前向きであることが記載されています。下のアイコンはギャンブル依存からの回復を支援する組織へのリンクになっています。
事業の継続性(流行りのことばを用いるなら持続性)を考慮すれば、一定の割合で生じるギャンブル依存に陥る人たちに対して知らん顔をするのは得にはならないですよね。楽しくほどほどに遊んでもらうのが一番。長く続けるほどに業者側が潤うわけですが…
※海外の認可を受けて営業している正規のブックメーカーであっても、日本からの賭けは禁じられています
ギャンブル依存について注意喚起すべき理由
ギャンブル依存という文言を入れたからといって、ギャンブル依存が防げるか、というと疑問はあります。どの程度実効性があるのかは分かりません。
しかし、のめり込んでいることを意識した時に「ギャンブル依存」や「ギャンブル障害」と書かれたリンクが目に入れば、ひょっとしたら助けを求める気になるかもしれません。日頃から「ギャンブル依存」の文字を目にしていれば、意識していなくても必ず頭に残ります。困ったとき、あるいはのめり込みすぎていることにふと気づいた時に、回復支援のための情報にすぐにアクセスできる状態にしておくことは無意味ではありません。
ギャンブル依存予防の実効性が薄かったとしても、ギャンブル依存対策をきちんと行っていることのアピールになります。「ギャンブル依存については気にしています。問題を抱えてしまった人にきちんと対処します」という姿勢を示しているからです。まして公営競技の施行者は自治体。アピールにならなくてもやってしかるべきです。
少なくとも「ほどよくたしなむ大人の遊び」「適度に楽しみましょう」といった文言でお茶を濁していては喚起になりません。「本来は刑法に触れる賭博の主催を例外的に認められている」ことを思い出して、もっとわかりやすく書くべきです。
公営競技のギャンブル依存症 相談先と相談方法