競走馬残酷物語

2017年に国内で生産されたサラブレッドは7,079頭、サラブレッド系が1頭の計7,080頭。

走るために生まれてきたと言われるサラブレッドでありながら、全てが競走馬になれるわけではありません。

生まれつき身体的に問題があったり、気性が激しく馴致にも難がある馬は買い手はつかず、表舞台に立つことなく去っていきます。
トレーニング中に能力が足りないことが判明したり、ゲート入りや調教を嫌う馬も同じ運命を辿ります。

行き先は肥育農家。牛と同じように食用に育てられ、加工されて出荷されます。

走る能力があると認められ、競走馬として登録されても試練が待ち構えています。

レースで成績を残せなければ5歳、6歳で引退することになります。
引退後は運がよければ乗馬クラブや誘導馬、パレード用馬として引き取られますが、大半は馬肉となります。

馬の平均寿命は約25年。

30歳以上まで生きることも珍しくない馬を、用途もなく面倒を見続けるのは難しい。そしてなにより金銭価値に置き換えられる経済動物(産業動物)であるのが現実です。

こちらは20年ほど前と古い番組ですが、当時の状況を詳しく取材しています。

『走るために生まれた』と言われるサラブレッドは競走馬として夢や希望を乗せて走っていますが、その陰には無数の残酷な現実があります。

経済動物と割り切るには馬にロマンを背負わせすぎている

JRAのコピーや競馬番組を見ていると、しばしばこう感じます。

競馬に出られても生き残る馬はわずか

成績を残せた牡馬は引退すると種牡馬になります。

主要なレースで勝ってその馬の強さが証明されれば、引退後も種牡馬としての活躍に期待されます。

強い牡馬は引退の価値が高い。
ただし種牡馬となれるのは1%未満とごく少数。

牝馬は血統や成績がよければ繁殖牝馬となります。繁殖に利用される牝馬は牡馬より数は多く、二割程度は繁殖登録されます。その反面、牝馬は扱いが難しい傾向にあるため乗馬クラブでは避けられがち。
乗馬クラブに引き取られる馬の多くは騸馬(センバ:去勢した牡馬)

中央競馬にもアサカディフィートやトウカイトリックのように10歳でも重賞を勝つ馬もいますが非常に稀な例で、多くの馬は5歳ごろから引退が目立つようになります。中央で走っている10歳馬はほんの数頭です。

引退後の主な行き先

競走馬の引退後の行き先として繁殖以外でもっとも多いのは乗馬クラブです

  • 乗馬クラブ
  • 高校・大学の馬術部
  • 誘導馬
  • 馬事振興組織の一般乗用馬
  • 研究用飼育
  • お祭り・パレード用馬
  • 馬肉

直近の詳細なデータは見当たりませんが、2014年には国内1,000を超える乗馬施設に、1万5千頭ほどが乗用馬として登録されています。

乗用馬として働く期間10年(根拠はありません)として平均的に入れ替わると計算すると、一年間に1,500頭ほど乗馬クラブなどに出入りしていることになります(長くなれば入れ替わりの頭数は減り、20年なら700頭ほど)。

乗用馬としてはサラブレッド以外の馬も用いられるため、乗馬クラブに引きとられる馬はもっと少なくなりますが、それでもほとんどがサラブレッドと言っていいでしょう。

 

乗馬クラブの馬も基本的に変わらない

乗馬

サラブレッドが競走生活引退後にクラブに引き取られ、あるいは再調教されて乗馬クラブに買い取られても、歳をとって人を乗せられなくなる時期はきます。

そこで再び引退することになりますが、余生を養老牧場で過ごせるとは限らないのが現実です。

30歳を過ぎても人を乗せて歩く馬はいますが、乗馬クラブで営業に使えるかは別の話です。
重くなった(ズブくなった)馬として観光牧場で観光客を乗せて歩く職に就くこともあるかもしれませんが、サラブレッドである必要もありません。

もちろん最後まで面倒を見るクラブやオーナーはいます。また、乗馬クラブの会員がお金を出しあって好きだった馬を養老牧場に預けるケースもあります。

しかし頭数が増えれば金銭的負担は大きくなり、限界もあります。

 

サラブレッドも馬肉として食される

馬肉になる馬の多くは大型馬です。ばんえい競馬の能力検査に落ちた馬や、馬肉用として輸入された馬が食肉用となります。

動物愛護の観点からはサラブレッドであろうが重種(じゅうしゅ:大型馬)であろうが変わりないはずですが、不思議と大型馬は問題視されません。

 

馬肉に占めるサラブレッドの割合は相対的に高くはありません。

そういった事情からか、「サラブレッドの肉は人間の食用にはならない。動物の餌として用いられる」という情報をネットで見かけることがあります。

しかし実際には肥育場に送られ、質がよければ人間の食べる馬肉として出荷されます。当然のごとく馬刺しにもなっています。
コンミート(牛以外の肉を入れるとコンビーフとは表記できなくなったため、今は別製品になっている)には馬肉が入っています。

人間が食べるのに適さない馬の肉は、動物の餌として活用されます。馬肉は牛や豚肉と比べてカロリーが三分の一程度と低くヘルシーなので、動物の餌には最適です。

馬は余すところなく活用されているため、製品の原料となっていることはよくあります。

革製品は当然として、女性なら美容を意識して馬油を使っている人も多いことでしょう。

競走馬・サラブレッドはそれほど縁遠い存在ではありません。

 

馬は勝てなければ処分されると思って走ってはいない

馬はレースで走らずにすむなら走りません。。サボれるものならサボろうとします。

気性が素直であればレースでは走るものだと理解して走ります。
レースに勝てばみんなが喜んでくれることを理解していれば、気合を入れて走ることでしょう。

その一方でゲート入りを嫌がったり、楽をするために騎手を落とそうとする馬もいます。

馬がレースを好きと考える根拠はありません。走れと命令されててるから走っているだけです。

ひたむきに走る姿が美しいと評する人もいますが、馬が全力疾走するのは肉食獣に襲われる危機に見舞われた時であって、楽しい状況ではないのです。

勝てなければ処分される

競走馬がこの事実を理解していたら楽をしようなどと考えず、どの馬も必死で走ることでしょう。

競走馬に自らの行く末、末路を考えられる能力があったら、ヒトと仲良くなるとは到底思えません。

 

馬の運動能力は4歳の秋にピークを迎えると考えられています。

ピークを迎えた後急激に衰えるわけではなく、能力は数年間は持続します。晩成の馬なら5歳に入ってから本格化ということもあります。

にも関わらず、なぜ7歳や8歳の馬が少ないのか。
必死で走らなかったからといって痛い目に遭わされたり、ご飯を抜かれたりするわけではないことに気づくからだと考える人もいます。

素直な馬もレースを嫌がる馬も、お肉にされる恐怖と戦ってはいない点では幸せかもしれません。

 

馬肉を食べるのは文化

優れた成績を残した馬を功労馬として余生を過ごさせるのは自然なことです。

しかしその陰にいる天寿を全うできなかった大多数の馬たちを置き去りにしていいのでしょうか。

強い馬を残すことは、裏を返せば強ければ生きる価値があり、走るのが遅ければ生きる価値はないという選別にかけ、肉にしているということ。

夢とロマンの正体はこれです。

 

疾く強い馬を作るというサラブレッドの存在理由からも、成績を残せなかったサラブレッドを競馬から退場させるのは当然です。

しかし成績を残すだけの力がないために、ひょっとしたら馬肉になって私達の口に入っているかもしれない現実が表立って語られないのはなぜでしょう。
黒毛和牛はおいしいと抵抗なく口にするように、競走馬や乗用馬が肉になることを口にしていけない理由はないはずです。

ばんえい競馬は食用に肥育される種であるため、レースの遂行のための能力が足りなければ馬肉になることも隠されていません。しかし違和感なく受け入れられています。

馬肉を食べるのは文化です。アメリカやイギリスでは馬肉を食べることに拒否感がありますが、フランスでは普通に食されます。

馬肉を生産している会社では、おいしいお肉を生産・提供しています。牛や豚と同じく、肉として利用されているまでのこと。

経済動物である競走馬の行き先について表立って語られないのは臭いものに蓋をしているだけです。

勝てずに肉になる馬を臭いもの扱いをしますか?そしてロマンを語りますか?

これこそ残酷なことではありませんか?

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