タイトルはちょっと仰々しくなっていますが、そんな大それた話ではなく、個人が引き取るときにどんな不安があったか、どうすれば解消できるかという話です。
引退馬支援の紹介記事を書いていたとき、ふと気になったのが引退馬を個人で引き取る場合のこと。
引退馬競走馬の支援が組織的に行われるようになり、リトレーニング(再調教)を受けた馬を譲り受けることもできるようになりました。
調教された馬を引き取る場合は十分なケアを受けてプロの手により訓練されています。
しかし個人が引退した馬を直接引き取る場合はどうか。
- どんなところで困ったか
- どうなればもっと引き取りやすくなるのか
こんな疑問が頭に浮かびました。
引退競走馬を再調教して乗用馬にするケースと、騎乗は目的とせず引退後の余生の面倒を見るために引き取る場合では異なる部分はありますが、個別の馬に個人として向き合う点では共通しています。
(馬主や調教師と直接の知り合いで、乗馬に向いてるから引きとってほしいと頼まれるケースでは異なります)
どうすれば個人でも引き取りやすくなるのか
これに関連する話として思い出したのが、引きとった引退馬の馬の去勢手術を受けさせるために苦労したという Club Happy Horse さんのお話。「引退競走馬を譲る前に去勢してくれていれば」ということを書かれていました。状況によっては無理なこともあるにせよ、馬専門の獣医がいる環境で去勢してくれていれば、というのは、そうだろうなと思います。
そこで Club Happy Horse さんに軽い気持ちで直接訪ねてみました。ほんと軽い気持ちで参考のためのつもりだたのですが、気が付いたら、がっつり記事にして投稿してもらえました。
組織的な引退馬支援の試みと枠組みは一般紙でも報じられ、個人が引き取った話も報道でときおり目にします。しかし実際に個人が引き取る時の不安や、どうあればもっと安心できるかまでは踏み込めない。
そんな部分に踏み込んだ投稿で、知りたかったことが書かれているので紹介させてもらいます。
記事では次の4つが問いとして立てられています。
- 競馬を引退してくる馬をひきとる時に、一番心配なことは何でしょうか?
- もし、引き渡し前に馬主側(ブローカー、牧場、JRAなど)にやっておいてほしいことがあるとしたら、何でしょうか?
- 馬と共に提供してほしい情報などありますか?
- 地方競馬からの場合、上記で中央競馬の馬と異なることがあれば、ご意見をお聞かせください。
詳しくは投稿されたページを見てください。
「いわおち(岩陥)」は体の表面の一部がへこんでいる特徴のこと。生まれつきのこともあれば、後天的になることも。
Anyone know what this ‘dent’ in my horse’s neck muscle is? Xpost
要点をまとめるとこうなります。
1.一番心配なこと
①の一番心配なことでは健康状態と適正が挙げられています。乗馬にするなら適正の問題は出てくるし、健康状態によってはできないことも出てくる。
予めどの程度のケアが必要かも知っていないと、あとから大変となりかねません。
➂の項にも関わりますが、十分な「情報の提供」があるかないかで不安は大きく変わるのでしょう。
2.やっておいてほしいこと
②のやっておいてほしいことは先述した去勢。そのほか、治療記録や
去勢のような施術については難しいかもしれません。タイミングや体調の問題で、したくてもきないこともあるでしょうし、譲渡のタイミングで去勢が必要となれば、面倒でやめてしまう人も出るかも。
去勢されていない引退競走馬は、競走馬抹消後も、引き取り手の求めに応じて競馬施行団体や周辺の組織で無料で行う仕組みはあっていいでしょう。
引退馬の活用促進に適合する上に手術は一回限りなので、
3.提供してほしい情報
提供してほしいのは、飼う際に必要となる情報の一言で済んでしまうかも。
- 診療記録
- レントゲン
- エコー写真
- そのほか血液検査の結果
- 癖
- これまでの食事の与え方や分量
体ができる前から運動をし、全力で走っている競走馬は、なんらかの問題を抱えています。引き取る側に
4.地方競馬の事情
地方と中央の差というものが生じてくるのですが。一概に言えないところと分からない部分が多いので、ここは触れないでおきます。オリジナルの投稿を読んでみてください。
必要なのは適切な情報提供の枠組みと透明化
必要なのは適切な情報提供の枠組みと、健康情報の透明化なのでしょう。
病歴を知らせず譲るというのはペット関連でもよくある話なので、透明化については動物全般の枠組みが必要かもしれません。
「診療記録の開示」はペットに関しては、強制力の働かしようがないので無理。しかし競馬主催者の施設内での診療記録は、引き取る人に開示できるのではないでしょうか。動物を扱う団体としては、福祉の一環と位置付けて、飼養者への適切な情報提供というのはありではないかな、と。
診療記録は引き取る引き取らないを決める根拠としてもそうですが、引き取ってからの扱い方やケアの仕方にも影響します。
JRAは乗馬クラブなどとの連携のための試験的な取り組みをしていますが、対個人の観点からのアプローチもありでしょう。