天然記念物宮古馬 保存対象から外すと天然記念物でなくなる理由の考察

謎馬

真相究明ではなく事実関係の確認のために問い合わせただけなので、曖昧な部分を突っ込んで聞いてはいません。

したがって想像の部分が多いことを予めご了承ください。

ときおり「天然記念物を捕まえて飼育したら違法、逮捕された」といったニュースを耳にします。

そのため天然記念物に特別なイメージを抱きがちですが、秋田犬、甲斐犬、紀州犬、柴犬、四国犬、北海道犬のどれもが国の天然記念物です。

「天然」記念物であっても野生とは限りません。「日本に特有な畜養動物」もまた、天然記念物に指定されます。

野生の天然記念物を捕まえるとアウトですが、もとから人間の手で飼育されている動物は譲渡もできます。

特別天然記念物であれば飼育や譲渡も制限があります。また希少生物は種の保存法でも守られており、野生のものを捕獲すると大変厳しい罰則がもうけられています。

天然記念物や希少種については重なる部分があるため混同しがちなので、分けて考える必要があります。

野生のものを捕獲してはいけないし、そのまま飼育するのも当然だめです。しかし元から家畜なら厳しい制約はありません。

これを前提として、沖縄県の天然記念物「宮古馬」の保存方針について考えてみます。

宮古馬虐待問題については触れませんので、経緯を知りたいかたは過去記事をご覧ください。

宮古島宮古馬宮古馬の不適切な飼育による虐待問題・報道まとめ

 
宮古馬は沖縄県の天然記念物に指定されており、宮古馬保存会に所有されています。

保存会は現在は教育委員会が担っており、所有する馬は月五千円(増額予定、これに加えて馬亊協会からの補助)で、民間に預託しています。

宮古馬所有者は保存会で、実際に飼育しているのは預かっている人々です。
 
2018年11月の新聞では、宮古馬を保存対象から外せば移動などで生じる煩雑な手続きが必要なくなり、活用しやすくなるとありました。

 宮古馬の保存をめぐっては、2015年度に保存計画が策定されているが、県の指導及び天然記念物としての位置付けを明確にすることなどを狙いに再検討の方針を確立。31日に学識経験者らを交えた保存計画策定委員会を発足させた。

委員会は県や市の担当者ほか、大学准教授、市史編さん委員らで構成。委員長には市教育委員会生涯学習部の下地明部長が就いた。

会合では、宮古馬の価値を共有しながらも保存・活用のあり方については決定打に欠く議論が続いた。

雄馬の保存方針として現行計画に定めた▽10歳以上で後継馬が出ている馬は保存から除外▽精液が薄く種付けが困難と判断できる馬は保存から除外-は見直した方が良いとする意見があり、異論はなかった。

県によると、保存から除外された宮古馬は天然記念物としての位置付けを失う可能性があるという。天然記念物の場合、移動などの手続きが煩雑になり、経済活動における自由度が制限されるためだ。だが、安易な天然記念物の除外は日本在来馬の価値を下げてしまうという懸念が出た。

宮古馬の保存法再検討へ/計画を大幅見直し | 宮古毎日新聞社

2018年11月1日(木)

 

「天然記念物だと移動させるにも煩雑な手続きが必要になる」のは、「沖縄県文化財保護条例施行規則」第30条のあたりが理由と思われます。

第30条 条例第36条第1項の規定による現状変更又は保存に影響を及ぼす行為をしようとする者は、現状変更又は保存に影響を及ぼす行為をしようとする日の30日前までに、沖縄県指定史跡名勝天然記念物現状変更等許可申請書(第26号様式)に次の各号に掲げる書類を添えて提出しなければならない。

「現状変更または保存に影響を及ぼす」の範囲次第ではありますが、確かに煩雑です。

天然記念物から外されれば報告の義務がなくなるから移動はしやすくなるでしょう。

ただ、天然記念物指定は種に対するもののはずなのに、保存対象から外すと天然記念物でなくなる根拠がよく分からない。

最初は下の図の枠組みだろうと考えていたのですが、聞いてもはっきりしない。

宮古馬の保護スキーム

想像していた宮古馬保存の枠組み

「保存会」が特定の宮古馬を保存対象から外して第三者に譲渡しても、天然記念物には変わりないと思えるのですが、そこがはっきりしない。

馬の所在は保存会が把握しており、県では直接タッチしておらず、どこに責任があるのかもはっきりしない雰囲気。

想像するに、個別の馬については「保存会」が一括して「管理」しているとみなし、県は「保存会」という所有者の住所を馬の所在地として考えていたのかなあという気がします。

そして天然記念物指定の文言を見ると、「保存団体」と宮古馬が紐付いているようにもとれる。

史跡名勝天然記念物の県指定
平成3年1月16日
教育委員会告示第4号

沖縄県文化財保護条例(昭和47年沖縄県条例第25号)第32条第1項の規定により、次のように指定する。
1 指定名称
沖縄県指定天然記念物 宮古馬
2 所在地及び保存団体
(1) 所在地
平良市字西里240番地の2
(2) 保存団体
天然記念物宮古馬保存委員会

宮古馬という「種」ではなく、保存団体である「宮古馬保存会」の管理している宮古馬が天然記念物指定されているということなのかも。

宮古馬の保護スキーム

そうすると保存会が宮古馬を保存対象から外せば、天然記念物でもなくなることの辻褄があいます。

保存会の元にいることが宮古馬の天然記念物の条件であれば、所有して預託すること自体が保存活動になる、と。

保存会が宮古馬を保存対象から外して譲渡すること自体は(法的には)可能なようです。しかし保存会の方針として想定していないために現段階ではできないようです。

「ようです」ばかりですが、本当によく分からない。

 

適切な運用ができなかった理由の推測

数頭しかいない状態で絶滅するかもしれないという危機感から、これまで産めよ増やせよでやってきた。

そして2015年に目標としていた50頭になった。

さあこれからどうする?という時に、10歳以上の繁殖に寄与しない馬を保護から外すといったことが検討されました。そして積極的な活用方針は打ち出されなかった。

この時に保存方針を見直して管理や活用についてもきちんと議論していれば、今の状況にも、もう少し対応しやすかったでしょう。というか、こういう事態は避けられたかもしれません。

とはいえ抜本的な見直しは難しかったろうと思う部分もあります。

  • 馬の頭数は増えて絶滅の危機はとりあえず避けられた
  • 時間の経過により初期の危機感は共有されていない

馬が身近にいた世代の愛着が共有されていない状態では、馬を残すことの意義や意味が見出しづらいです。もちろん愛着を持っていた人たちの声に耳を傾けて、真摯に取り組めばよかった話ではありますが…。

今後は馬の扱いに詳しい人も交えて検討するとのことなので、宮古馬の活用についてはこの先の話になりますね。

ただ、県と市の間の位置づけは早いところ調整しておくべきでしょう。天然記念物としての指定のしかたを変えるのなら、時間かかるかもしれませんが。

 

活用のためには民間に譲渡するほうがいい

子供が生まれたら10万円支払われるといった話はおいて、保護のために用いられる預託費の少なさは、財政的にも苦しいことも一因であれば、全ての宮古馬を市が買うというのは無理があります。たとえ「野生状態」に置くとしても相応の費用はかかります。

予算的な問題だけでなく存在意義の面からも、ある程度の頭数は観光資源として位置づけて活用するほうが理にかなっています。

そして馬を資源として活用するのなら、JRAの「畜産振興事業」の助成が受けられます。ただ、自治体や国のからの補助があると対象外。

NPO法人であれば交付対象となるので、譲渡して活用してもらうのがいいんじゃないかな。

保存会は繁殖に注力する。活用は民間に任せる。こういう役割分担をすれば、もう少し先を見据えた方針を打ち出しやすくなるでしょう。 宮古島宮古馬宮古馬の不適切な飼育による虐待問題・報道まとめ

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