『優駿の門2020馬術』(マンガクロス連載作)の読後感 そこまで事実を隠したいのか

競馬コミックの定番としてシリーズ化している『優駿の門』シリーズの最新作『優駿の門2020馬術』が2019年9月6日金曜日より、ウェブサイト『マンガクロス』で連載が開始されました。

優駿の門GI、優駿の門 -ピエタ-、優駿の門-アスミ- など、主人公が異なるものもある『優駿の門』ですが、今回は元競走馬とそれを取り巻く人々を描いた馬術もの。タイトルにあるように、2020年のオリンピックを意識しているようです。

全50話、約一年に渡って連載予定。

引退競走馬ムーンが、高校馬術部でどのような活躍をするのか。

1話目を見ただけでなんとも言えませんが、気になったのが「現役を引退した馬は一部の馬を除き再就職するためにリトレーニングという再調教を受けます」のくだり。

実際は再調教を受けられるのが一部。大半は「処分」される。事実関係が真逆になっています。

都合のいい数字を用いたり、強調するのはありだとは思います。演出としてリアルにならないところはある。

しかし引退競走馬を扱う以上、この部分で事実を捻じ曲げるのはアウトでしょう。

年に7000頭前後のサラブレッドが生産されています。そしてそれだけの数の馬を競馬から引退後も養う余地はないのが現状です。現在の日本の競馬は、屠畜(馬肉生産)があるから成り立っています。

引退馬といえど、最低でも毎月数万円の費用がかかります。もし馬肉にすることなく全ての馬を飼養するのであれば、おそらく捨てられたり満足な世話もされない痩せこけた馬が発生することでしょう。

実際、バブルが弾けたころに、捨て馬や餌を与えられず餓死したと思われる馬が発生しています。

馬の屠畜はそんなにいけないこと?事実に反することを書いてまで隠さなければいけない「悪いこと」?

馬の屠殺をそこまで好ましくないと考えるのであれば、生産頭数を減らすように主張するしかないですよ。競馬ファンに馬券を買わないで、とお願いしたらどうかな。

名を覚えられることもなく馬肉になる馬を、存在しなかったことにするの?それこそ残酷なことではないの?

優駿の門2020馬術

画像は秋田書店「マンガクロス」より