JRAの厩務員のしごと 競走馬の手入れだけでなく調教も行う

厩務員パドック競馬場

厩はウマヤ、つまり馬小屋の意味。歴史の授業でもおなじみの聖徳太子が厩戸皇子(うまやどのみこ、うまやどのおうじ)と呼ばれていたのは、馬小屋で生まれたことに由来しています。

「厩舎」はもともとは家畜を飼う小屋のことですが、現在では馬を飼育管理する施設や組織のことを総称して厩舎と呼びます。競馬であれば、〇〇調教師の厩舎を〇〇厩舎と表現されます。

厩務員(きゅうむいん)は文字通り厩の仕事をする人のこと。競馬の世界では調教師のもとで競走馬の世話と健康管理を行います。

「厩務員」としての仕事は馬の世話と健康管理ですが、近年では厩務員も調教を担うことが期待されています。

JRA厩務員の職場

JRA厩務員の主な職場は競走馬の調教施設であるトレーニングセンター。トレーニングセンターはトレセン、TCとも呼ばれ、茨城県の美浦村と滋賀県の栗東の2箇所にあります。所属するトレセンによって、馬やジョッキーは関東と関西に分かれます。

関西関東では立地上の利便性や施設の若干の違いはありますが、どちらのトレセンにも芝・ダート・ウッドチップ・坂路などのコースや、プールといった馬のトレーニングに必要な設備が備えられています。

調教師は所属するトレセンの馬房で馬を預かり、レースに出走させて厩舎を経営しています。

調教師の預かった馬の世話をする厩務員は、美浦または栗東のトレセンで働くことになります。もちろん管理馬がレースに出走するときは同行するため、競馬場も厩務員の職場です。

 

厩務員の仕事

厩務員の仕事を一言で表すなら、調教とレースを除く馬の世話と健康管理全般となります。

  • 飼い付け(飼い葉:馬のご飯を与える)
  • 馬房(ばぼう:馬の部屋)の清掃
  • 馬装(鞍や頭絡をつける)
  • レースや調教の前後の運動(ウォーミングアップとクールダウン)
  • 馬の手入れ(体を洗ったり清潔に保つ)
  • 健康管理

中央競馬では厩務員1人あたりが担当する馬は2頭と定められています。

馬の管理責任を負うのは調教師ですが、個々の馬の状態をもっとも把握しているのは担当厩務員です。体調の変化を確認して、トレーニングやレースに使えるか、そしてレース後のケアも厩務員の仕事です。

馬の管理全般を担う厩務員はウォーミングアップなどの軽い運動はさせられますが、コースでの調教は行えません。

トレーニングセンターのコースでの調教は、調教助手と調教資格を持った厩務員が行います。

 

持ち乗り制 調教助手と調教も行う厩務員

昔は馬の世話をする専門の「厩務員」としての採用もあったようですが、現在では厩務員にも調教ができることが求められます。

「厩務員」は馬の世話専門の職種です。しかし資格を得れば、厩務員でも調教を行えるようになります。

世話する担当馬をもちつつ調教も行うことを「持ち乗り」といいます。

調教も行う厩務員は「調教厩務員」とよばれます。

また、調教助手として担当馬を持つ場合は「持ち乗り調教助手」と呼ばれます。

厩務員が担当馬だけを調教をするのは「調教厩務員」、調教助手が担当馬をもつのが「持ち乗り調教助手」。

職制上の違いはあれど、厩務員としての仕事と調教の二足のわらじをはいている点では変わりません。

 

調教助手と厩務員

美浦や栗東のトレーニングセンターで馬の調教は、担当をもつ持ち乗り調教助手(調教厩務員)と調教専門の調教助手が行います。

担当馬を持たない調教助手は「攻め専」と呼ばれます。

調教助手として働くためにもJRA競馬学校の厩務員課程を修了している必要があります。

例外は引退したJRAの騎手で、厩務員課程を経ることなく調教助手になることができます。

 

チーム化が進む厩舎業務、職種での区分は曖昧に

ここ10年、20年で厩舎のチーム化が進んでいます。

20頭預かる厩舎の場合、馬2頭あたり厩務員1人と定められているため必要厩務員は10名。それに調教助手(攻め専)2名が加わって12名のが厩舎のスタッフとして働いています。

馬一頭あたりにかけるトレーニング時間を増やすため、調教のための人手が必要になっています。攻め専と騎手だけでは手が足らないため、厩務員も調教に駆り出されるようになりました(調教助手が厩務員としての仕事を行っている)。

仕事の絶対量が増え個々に担当馬だけを見ていては仕事が回らないため、厩舎スタッフとしてのチームで業務が行うように変化しています。

馬がレースで勝利すると、担当している厩務員には進上金として賞金の5%が支払われます。厩舎によっても異なりますが、現在では進上金のうちの何%かは担当厩務員個人に渡し、残りを厩舎スタッフ全員に分配というプール方式が増えています。

一頭一頭にかける調教時間が増えたことも、日本の馬が強くなった一因と考えられます。

 

JRA厩務員になるには

JRAのトレセンで働く厩務員になるには、競馬学校の半年間の厩務員課程を終了する必要があります。詳しくはこちら。

競馬場パドック競走馬JRA中央競馬会の厩務員になるには

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です