米三冠馬ジャスティファイ薬物陽性問題 バファート師の咎はあまり関係なさげ

米ニューヨーク・タイムズは11日、2018年のサンタアニタダービーでジャスティファイが禁止薬物『スコポラミン』300ng/mlが検出されていたことから、その後に出走して勝利したケンタッキーダービーの出走権がなかったのではないかと報じました。いわゆるドーピング疑惑です。

ジャスティファイ(Justify)は2018年の米クラシック三冠馬。米国三冠は3つのG1レースからなっています。

  1. ケンタッキーダービー
  2. プリークネスステークス
  3. ベルモントステークス

サンタアニタダービーのジャスティファイ優勝後に行われた血液検査で禁止薬物陽性となれば、失格となり優勝は剥奪。

するとケンタッキーダービー出走権のポイントが加算されず、出走ができない。だから三冠馬ではなくなる、という結論になります。これがNYタイムズが報じたことです。

で、これ結構ややこしくなっています。

スコポラミンの混入はバファート師も認めている

ジャスティファイの調教師ボブ・バファート(Bob Baffert)師はスコポラミンが混入した事自体は認めています。

しかしその原因は、カリフォルニア州で干し草や藁の生産地域で自生している「チョウセンアサガオ」が混入したことにある。

意図的にスコポラミンを投与した訳ではないとしています。

チョウセンアサガオ混入の可能性はかねてより認識されており、カリフォルニア州競馬委員会(CHRB)は2016年に注意喚起をしています。そのため藁に混入したという主張にも合理性があります。

さらにバファート師は、カリフォルニア競馬議会の決定に一切の関与をしていないことも明言。

禁止薬物が入っちゃったことは認めるけど、意図的に投与したものではないよ!というのがバファート師の主張です。

三冠レースについてはすべて薬物ネガティブ(陰性)です。したがってジャスティファイのドーピング疑惑は、サンタアニタダービー1レースのみです。

ケンタッキーダービーに出走できた理由

禁止薬物ポジティブなのにケンタッキーダービーに出走できたのは、手続き上可能であったからです。

  1. サンタアニタダービー
  2. ケンタッキーダービー
  3. プリークネスステークス
  4. ベルモントステークス

薬物陽性なら①⇒②のルートがなくなります。しかし薬物陽性が確定したのは②の後だったために、ジャスティファイは問題なくケンタッキーダービーに出走できた、というわけ。この過程は通常の手続きなので問題はありません。

なぜそんなことが生じたのか。

時系列

2018年4月  7日 サンタアニタダービー(Santa Anita Derby)勝利

2018年4月18日 検査機関はジャスティファイがスコポラミン陽性であることをCHRBに通知する

4月26日 バファート師がジャスティファイポジティブの通知を受け取る

5月1日 ケンタッキーダービー4日前、バファート師は確認のために別の検査機関にサンプルを送る

5月5日 ケンタッキーダービー

5月8日 スコポラミン陽性が確認される(確定)

疑惑の一つは、カリフォルニア州競馬委員会が陽性を知ってからバファート師に伝わるまでに時間がかかっていること(その間の出来事はNYTimesの記事に書かれてはいる)。

二つ目はケンタッキーダービーの後でも事実を公表して審議すればいいのに、それを怠ったこと。そればかりか、裁定を甘くする方に動いてしまった。これが疑惑となっています。

バファート師が意図的に投与したかは分かりません。しかしこの疑惑にバファート師の意図にはあまり関係がなく、CHRBの対応の問題のようです。当時の基準ではアウトだったのに、後に緩和して遡及させるつもりで、あえて見逃したようにも見えます。

元記事は長い上に続報も断片的で分かりにくいので、ざっと読んだ印象です。間違いがあったらコメ欄ででも教えて下さい。

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