競馬の斤量(負担重量)の影響

競馬では牡牝の違いや馬齢(馬の年齢)による成長度、能力差を踏まえて、競走馬の背負う重量を設定しています。負担する重量は斤量とも呼ばれます。

負担重量には定量・馬齢、別定、ハンディキャップがあり、レースによって設定基準が異なります。

たとえば日本ダービー(東京優駿)であれば、牡馬の斤量が57kgなのに対して牝馬は55kgと2kgの差が設けられています。

負担重量には騎手の体重やブーツ、勝負服、鞍などが含まれ、規定の負担に足りない分は、鉛などのおもりを鞍の下や勝負服に入れて調整しています。

騎手の体重が少ない分にはおもりを足すことで調整できますが、負担重量より重ければ騎乗できません。騎手は身長が低いほうが有利と言われるのは、体重を維持しやすいためです。

 

斤量1キログラムあたりのレースへの影響

斤量が1kg増えると、おおむね 1馬身分=0.2秒 遅くなると考えられています。

日本ダービーの牡馬なら57kg、牝馬より2kg重い斤量を背負うので、2馬身分遅くなる計算になります。

57kgは55kgのおよそ4%増し。体重が400kg以上ある馬からみれば微々たるものなのに、それほどの差が生じるものでしょうか。

また、馬の体重に比較して2kgは微々たるものとはいえ、距離が伸びれば伸びるだけスタミナを多く消耗することになります。その分だけ最後の脚に影響が出るように思えます。

この疑問のはっきりした答えは出ていないようです。レース毎に出走馬や馬場状態、コースがばらばらであるため、一律に数字を出すことができません。JRAでは経験則から導き出しているようです。

一般に距離が伸びれば斤量の影響が大きくなること、一定の重さまではさほど影響はなくても、閾値を越えるとパフォーマンスに大きな影響が出るといった見かたが主流のようです。

 

シンガポールの競馬主催者であるシンガポールターフクラブの負担重量と距離の相関が記載されたドキュメントには目安が書かれています。

シンガポールターフクラブ ハンディキャップの影響

ハンディキャップの影響
シンガポールターフクラブ

マイル(1,600m)では斤量1kg 増が1馬身分に当たるのに対し、2400mでは0.5kgが1馬身分となっています。

距離が伸びれば伸びるほど、負担斤量の影響が大きくなるという考え方です。

この計算を用いるなら、日本ダービーの牡牝の2kgの違いは単純計算で4馬身の差となります。

斤量の影響を受けやすい馬もいれば、そうでない馬もいる。息を入れて走っている時は影響が少ない可能性もあるため、レース展開によって異なることも考えられます。

様々な要素が絡むため、いろいろ考えると「分からない」。ある程度の経験則でやるしかない、ということになるようです。

 

馬齢重量戦

馬齢2歳3歳
1-9月10-12月1-9月10-12月
負担重量牡・騸54kg55kg56kg57kg
54kg54kg54kg55kg

北半球産競走馬に比べて半年ほど遅く生まれる南半球産競走馬は、ここからさらに斤量軽減があります。

 

定量戦

馬齢と牡牝だけで斤量が決まるレース。馬齢重量戦以外のG1は全て定量戦になります。

 

別定戦

牡牝と年齢で定められた基準重量に、賞金や勝利数によって加算されるレース。(牝馬はいずれも2kg減)。

 

ハンディキャップ戦

JRAにより負担重量が設定されるレース。出走馬の能力に合わせて大きな差が出ないように斤量が決められるが、レース結果が荒れることがある。

 

北半球と南半球異なる負担重量

日本の馬は1月1日に1歳年をとりますが、南半球では7月1日または8月1日に1歳加わります。北半球産馬に比べて南半球産馬は半年ほどの成長が遅いため、南半球産馬は馬齢重量から下の表の分だけ軽減されます。

距離馬の年齢1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
平地競走1,000m以上
1,600m以下
2歳333333
3歳222222222111
4歳111111
1,600m超
2,200m未満
2歳333333
3歳222222222222
4歳1111111
2,200m以上2歳444444
3歳333333222222
4歳11111111

日本ダービーに出走する南半球産3歳牡馬は57-2 = 55kg の負担となります。

 

南半球では日本の3歳馬は4歳になっていることも

上述したように南半球では7月1日または8月1日に馬齢が加わります。つまり日本の3歳馬は南半球では4歳または5歳となります。

UAEダービー(アラブ首長国連邦ダービー)では南半球の馬齢を用いているため、日本の3歳馬は4歳で出走することになります。

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