馬に与えるサプリメントから競馬では使用が禁じられている薬物「テオブロミン」が検出されたとして、そのサプリメントを購入した厩舎の15日、16日の出走予定馬を競走除外とすることが発表されました。
対象となったのは土日に開催される東京・阪神・函館の計72競走に出走予定の150頭以上の競走馬。
テオブロミンはチョコレートにも含まれるカフェインに似た成分でアルカロイドの一種。馬にとってよいものではなく、興奮や心肺機能強化などの薬理作用があるため競馬でも馬術競技でも使用が禁じられています。
馬用のサプリメントや医薬品は、通常は競走馬理化学研究所の検査で禁止薬物の有無を確認してから販売されるのが通例ですが、今回問題となった商品は検査の結果を待つことなく販売されたもの。禁止薬物「テオブロミン」が含まれていることを知らされずに販売されたため、各厩舎が禁止薬物が入っているとは認識していなかったものです。
結果として購入した厩舎の全ての競走馬(同一厩舎でも函館のみのケースもある)が競走除外の措置がとられました。
ニュースを眺めつつ掲示板などを見ていたところ、「禁止薬物の影響は宝塚記念まで残るのではないか」「どんな理由であれ禁止薬物を使用した厩舎はペナルティがあるのではないのか」といったものをちょくちょく目にしました。
その都度訂正されていましたが、たびたび繰り返されているようだったのでここにまとめておきます。
(このページの内容はJRAについてのものです。地方競馬でも同じサプリを使用していた場合はレースに影響がでるかも)
競馬における禁止薬物の「禁止」の意味
禁止薬物の使用そのものには問題ありません。ダメなのは禁止薬物を摂取した状態でレースに出走すること。従って禁止薬物を与えられていても、レースに出なければペナルティも発生しません。
仮に禁止薬物を使用していたとしても、体内で分解されたり排出されて抜けてしまえばレースに出られます。
テオブロミンが混入した可能性のあるサプリを使わず、体から抜ければOK。ただし検出されなくなるまで長ければ10日かかるので、金曜の夜から起算しても宝塚記念まで8日半。
この説明でも「わかんねー」という人は飲酒状態を考えてみてください。
二十歳以上の成人ならお酒を飲んでもおとがめはないけれど、飲酒状態で運転すると飲酒運転で捕まってしまう。
時間が経って酔いがさめれば(アルコールが抜ければ)運転できますよね。
これと似たケースと思えば分かりやすいかと思います。
ようは人間の「違法薬物」使用や所持とは異なるということです。
宝塚記念の出走予定馬への検査
宝塚記念(翌週)の出走馬予定馬のうち、薬物摂取の可能性のある馬は15日、16日中に検査を行うとのこと。
また、来週の宝塚記念(23日、阪神、GI、芝2200メートル)に出走を予定している馬については「基本的には検査が必要な馬につきましては、検査を行いまして、きょう(15日)、あす(16日)にかけて検査を行うという態勢を取っています」と説明した。
禁止薬物を使用してレースに出たら
禁止薬物の使用は競馬法で禁じられており、違反した場合は三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金が課されます。
第三十一条 次の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
二 出走すべき馬につき、その馬の競走能力を一時的にたかめ又は減ずる薬品又は薬剤を使用した者
白と断定できない馬を出走させると公正さが担保できないばかりか、法に触れる可能性も否定出来ないことになります(今回は故意がないことは明らかで罪には問われないにしても、もしレース後の検査で陽性が出たら放置もできない)。
禁止薬物と分かっていれば厩舎でもきちんと管理できますが、今回は管理すべきものという認識がなかった。そういう状態ではサプリを与えていない馬の飼い葉にも混ざってしまった可能性は否定できない。
各厩舎の判断に任せられるような話ではなく、可能性のある馬の全頭検査も時間的に無理。厩舎ごとに聞き取りをしても確証は得られない。
となると、サプリを摂取した『可能性』のある馬をまとめて競走除外にするしかないと判断したのでしょう。
岩手県水沢競馬場での薬物問題では開催が中止となりましたが、今回は原因がはっきりしており再発防止の手立てもあるので同一視はできないケースです。
検査結果を待たずに販売したのが事実であれば、責任の所在は販売した会社にあります。
ピンクブーケカフェイン検出後の禁止薬物チェック体制
競走後にピンクブーケ号からカフェインが検出された2014年12月に起きた事件の後に、再発防止策として販売者はロットごとの薬物検査の実施を義務付けられています。この規定に違反した場合はJRAの施設内での営業を禁止するという処分が記載されています。
販売者・製造者等に対し、ロットの考え方を徹底し、ロット毎の薬物検査と適正な管理を行うよう指導する。
特に、本会施設内で営業する販売者に対しては下記各項目を義務づけ、違背した販売者に対しては、本会施設内での営業を禁止する。・製造者が適正なロット管理を行っているかを確認したうえで商品を販売すること
・同一ロット表示であっても輸入時期が異なる外国製品については、薬物検査を受検すること
・本会主催の薬物に関する講習会に参加すること
・「飼料添加物等の薬物検査実施要領」を遵守することピンクブーケ事案」に対する裁定委員会の決定事項について|ラジオNIKKEI
6月15日時点で公表されているタイムライン
6 月 14 日(金)午後、公益財団法人競走馬理化学研究所(以下「理化学研」)より、弊社が薬物検査を依頼し
たカルシウムサプリメント(製品名「グリーンカル」/製造元:ニッチク薬品工業㈱(弊社子会社/以下
「ニッチク社」))から、競馬法上の禁止薬物であるテオブロミン※が検出されたとの連絡がありました。
(日本農産リリースより)
この段階で販売した厩舎に連絡をとり回収に動く。
複数の調教師から公正室あてに『自厩舎に納品された飼料添加物に禁止薬物が含まれているとの検査が出たので業者が回収したいと言っているが、どうしたらいいか』との問い合わせ
競走馬診療所で確認したところ、日本農産工業株式会社の飼料添加物、『グリーンカル』について、同社から競走馬理化学研究所に検査依頼があり、検査の結果、禁止薬物テオブロミンが含まれていることが判明
14日26時30分ごろからスポーツ紙による大量競走除外報道
15日開催分と16日重賞出走馬の出走除外馬を公表
22日~23日の開催に出走する予定している馬で、禁止薬物を摂取した可能性のある馬の検査を実施