馬も匹で数えていた ”匹”と”頭”と動物の助数詞(数え方)

”匹”という漢字はもともと二織りの布のイメージに由来しています。異字体は疋。

対になった2つのものを意味しており、布や絹といった反物1匹(疋)といえば、2反分の長さを指しています。

”匹敵”や”匹儔”が「相当する、釣り合う、同輩」といった意味をもつのも、二つのセットという概念から来ています。

匹にはさらに「馬」の意味もあります。

馬を馬運車などで運搬することを馬匹輸送と言い、JRAの出資する日本馬匹輸送自動車は馬運車を運用して毎週せっせと競走馬を運んでいます。

太平洋戦争中の小説や映画を見ると、輜重隊(しちょうたい)と馬匹という言葉がよく出てきます。

輜重隊は兵站(へいたん)部隊、現代風に言うなら軍事ロジスティックス。補給部隊のこと。”馬”でなく”馬匹”と呼ぶ理由は不明。

「匹」が馬を意味する理由

荷車や農耕具を引かせるなど、馬を使役する時は馬を後ろから見ていました。つまり馬の尻を眺めていた。

後ろから見た馬の尻の形は左右二つに割れている。このことから”匹”が馬を意味するようになりました。

そして”匹”は馬の数を勘定する時にも助数詞として用いられるようになります。さらに他の動物や生物を数える時にも使われるようになりました。

そのため、かつては牛や馬を”匹”と数えていました。

馬の数え方が頭になった理由

馬の数え方が”匹”から”頭”になったのは20世紀に入ってからのこと。

畜産が盛んであったヨーロッパでは中世には牛の数えるのに”head”を使っており、時代が下ると牛以外の家畜にも”head”を使うようになりました。

日本では文献に書かれた家畜の数詞”head”を”頭”と訳したことから、匹ではなく頭を使うように改められたと考えられています。

家畜だけでなく、ライオンやクジラ、イルカのような哺乳類にも”head”が適用されるようになっています。小さな哺乳類、猫や犬は匹が用いられています。

”頭”と”匹”の境界は必ずしもはっきりしておらず混在しています。

匹・頭以外の動物・生物の数え方

日本では動物は”匹”で勘定していましたが、江戸時代には獣肉食が禁じられていました。

しかし食べるなと言われても食べたいのが人情。

鳥を食べるのは禁じられていなかったので、ウサギは耳を羽根、二本足で飛び回るので鳥と分類して食べていました。ウサギの数え方が”羽”なのは鳥と言い張るための言い訳です。

さくら(馬)、ボタン(イノシシ)、もみじ(鹿)など、名前をゴマカシて薬として肉を食していました。

獣肉食禁止は農耕や輸送に用いる労働力たる”家畜”をの食肉を抑制する目的であったため、野性の動物を食べることは大目に見られていたと考えられています。

ウサギ:羽
鳥:羽
尾:尾びれのある魚
本:大きい魚
枚:平たい魚
杯:イカ・タコ
折:コイ
条:シラウオ・サヨリ

トリビア

一匹=二段反=約22m

 

匹には助数詞の他、二つの対、ともがら、夫婦といった意味があります。

匹夫匹婦(身分が低く教養のない男女)のように、人に対してはあまりよろしくない使い方もされます。”匹夫之勇”に至っては勇気を出して行動したのに「軽率」だとこき下ろされています。

 

それに対して一本の槍と一匹の馬で敵地に乗り込む”単槍匹馬”のように、馬につくとネガティブさがなくなっています。

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