引退馬支援団体の紹介ページの補足として、引退馬に関心を持った人が抱くであろう疑問に、よくある質問形式でまとめました。
引退馬支援団体の紹介はこちら。
『引退馬支援』代表的な団体と支援方法目次
引退馬支援ってなに?
引退馬には二通りの意味があります。
引退馬は、競馬、競技や乗馬馬としてのクラブでの仕事から引退した馬たちのことです。引退馬にも二通りあります。
一つは競馬から引退したばかりの「引退競走馬」。競馬が盛んな日本では、毎年5000頭以上の引退競走馬が発生しています。
もう一つは競馬だけでなく、乗馬・馬術・繁殖などで働いてきた馬が、年齢などの理由から仕事から解放されて、老後や余生を過ごす「現役からの引退馬」。
現役から引退した馬が余生を過ごす牧場は養老牧場や余生牧場と呼ばれ、馬たちは放牧されてゆったりした時間を過ごします。余生支援の場合は、飼料や医療費などの負担費用を支援することになります。
一方の引退競走馬のほとんどは、まだ若く十分働ける年齢です。
馬の寿命が長くなっていることもあり、引退馬を功労馬としていきなり養老牧場に繋養すると余生の方が長くなってしまいます。当然のことながら、飼養する費用もかさみます。
まだ元気な元競走馬を乗用馬、馬術競技馬としてセカンドキャリアを歩ませることで「働く馬」としての現役期間を伸ばす。
そうやって馬自身が食い扶持を稼げるようにするのが「引退競走馬」支援です。セカンドキャリアを人間の第二の人生になぞらえて、第二の馬生とも呼ばれます。
競馬では早く走ることが求められます。騎乗するのもプロの騎手。競走馬はプロドライバー向けのF1マシンのようなものです。
そのため元競走馬がふつうの人を乗せられるようにする(転用)には再調教が必要になります。再調教の期間はおよそ半年。費用はリトレーニング施設の一つでは月20万円としています。
「引退競走馬支援」では、リトレーニング(乗用馬などへの再調教)費用を賄うことになります。引退競走馬支援が必ずしも乗用馬への再調教とは限りませんが、支援のために費用が必要なケースは再調教のためと言っていいでしょう。
なぜ支援する必要があるの?
引退馬を養老牧場に預けるにせよ再調教するにせよ、費用がかかるためです。
競走馬は中央や地方競馬での競走生活から引退すると、多くの馬は乗用馬や繁殖(子作り)に用いられます。
2015年には2千7百頭の馬が乗用馬となっています。
競走馬の抹消事由 引退馬の行き先をグラフ化 1位は乗馬の2,702頭一方、国内で乗馬として用いられている馬の頭数はっきりしませんが、およそ1万5千頭~6千頭。
2千7百頭も吸収できるの?というレベルです。さらに行き先が不明の馬が1千4百頭います。合わせて4千頭以上が、競走から引退しています。
乗用馬や競技場として用いるには多すぎます。余った馬は、よく知られているようにお肉になります。
さらに乗馬・競技馬などとして用いられていた馬も、いずれ人を乗せて走ることができなくなり、引退する時期がきます。
繁殖に用いられた馬も、歳をとって子供が産めなくなったり子供の成績が上がらなければ、同様に引退することになります。
引退馬は生産牧場で引き取られたり、繁殖に用いていた牧場でそのまま飼育されることもあります。養老牧場で余生を過ごす馬もいます。
しかし余生を生きられる馬の数は知れています。仕事から離れた「その後」はお肉という運命です。
馬は経済動物ではありますが、せっかく生まれてきて人間の役に立った馬を肉にするのはしのびない。一頭でも寿命をまっとうできる馬を増やしたい。
少しでも長く生きてほしい。そういう気持ちの人が馬のために行っているのが引退馬支援です。
引退馬を支援するにはどんな方法があるの?
寄付をする、会員になる、フォスターペアレントになる、などがあります。
寄付はいわゆる普通の寄付です。
寄付は会費やフォスターペアレントのように定期的に支払う必要はなく、制限もとくにありません。認定NPO法人であれば、寄付金への優遇税制が受けられます。
「会員になる」は、支援団体の会員となって会費を支払って会の運営を支援します。寄付を毎月引き落とすことで、会費のような形で優遇税制を受けられるタイプもあります。
フォスターペアレントは馬の里親になること。Foster ParentなのでFPと呼ばれます。
FPは毎月一定の飼育費用を負担することで、里親として馬を見守ります。特定の馬のFPになるほか、馬は指定せずに里親になることもできます。
FPは口数を分けて募集されるため、小口で比較的少額でも支援することができます。
その他に「ボランティア」として働くことで支援することもできます。ただ、再調教など専門性が高い分野など、直接携わることができないこともあります。
再調教した元競走馬は売れるんじゃないの?
再調教した馬は売られることもあれば、無償譲渡されることもあります。
再調教された馬は売れます。しかし再調教費用がかさむため、再調教費用 > 売値 になり、採算が合わないのです。
採算が合わないのは、調教した馬の市場価値が調教費用よりも安いから。再調教費用を賄えるだけの収益が期待できない、ということでもあります。
市場価値がないからといって意味がないわけではありません。需要そのものはあるため、そこにプロの手できちんと調教された馬がいきわたることで、安全な馬が身近になる可能性があります。
行き先としては、乗馬クラブ、大学高校馬術部、神事のために馬を求める個人、乗用馬など。
供給側の再調教支援をしても、需要が飽和すれば働く先がなくなってしまう。そのため支援団体は需要の側を増やすための努力も行っています。
重賞を勝った馬には年金が出るんじゃないの?
助成金は出ます。しかし条件付きです。
ジャパン・スタッドブック・インターナショナルが行っている「引退名馬繋養展示事業」では、重賞競走の勝ち馬に毎月助成金を交付しています。
ただし交付には条件があって、10歳以上であること、常時展示(ファンの見学を認める)、事業に供されていない(繁殖はもとより乗馬・馬術などからも引退)などの制約があります(引退名馬繋養展示事業)。
金額は中央競馬重賞競走の勝馬には2万円、地方競馬で実施されたダートグレード競走の勝馬には1万円。
10歳以上で功労馬として完全に引退した馬をファンにも展示することで、ファンサービスを行う。そして余生の補助がなされる。名馬を支援するならあと2万円くらい上げてもいいとは思いますが、枠組み自体は優れていると思います。
しかし競走馬から別の使役馬となる第二の馬生には結びつかない制度です。
ふるさと納税はできる?どういう仕組?
受け付けている組織もあります。
ふるさと納税でNGOなどに寄付できる仕組みを利用している引退馬支援組織もあります。
NPOがクラウドファンディング(ネットによる資金調達)を行う際に自治体が窓口になることで、ふるさと納税の寄付先に選べるようになる仕組みです。ガバメントクラウドファンディング(GCF)と表記しているサイトもあります。
ふるさと納税の返礼品の価値が、寄付金の3割までという上限があります。もともとの趣旨は「自治体への寄付」であるため、返礼品へに支払った残りのお金は自治体の裁量で使うことができるものです。しかし残りも特定の目的に使ってほしいという人のために、使途を指定して寄付することもできます。
「子どもたちのための施設」「町おこし」といったさまざまな選択肢が用意されていますが、選択肢は予め自治体が決めているため、地域ごとに内容は異なります。馬産地や地方競馬のある自治体では馬産振興といった項目がありますが、一般的ではありません。
ふるさと納税で気をつけるポイントについて詳しくは、下のリンクからご確認ください。
『ふるさと納税』でできる引退馬支援・馬産地支援
おすすめの支援先・寄付先は?
おすすめはしません。ご自身で調べて納得されたところに関わってください
支援先のおすすめはしません。たくさんあるので、ご自身で調べて、納得して関わってください。
競馬をやめれば解決じゃないの?
はい、そう思います。
引退馬の「行き先」がないために殺処分される馬を減らしたいのであれば、競馬をやめるべきというのは正論です。
理屈で言えばその通りです。
あなたが競馬はなくすほうがいいと思うなら、あなたとは異なる考え方の人にも伝わるよう数字や理屈もそえて、説得力のある議論を展開してください。
鞭がパッド入りのものに変わったり、使用回数の規制が強化されているのは(海外では)世論の影響によるものです。日本も海外に準じていますが、国内の世論によるものではありません。
あなたが説得力ある議論を提起できれば、競馬がなくなることはなくても、馬の扱いの改善の一助になるかもしれません。
支援したほうがいいの?
あなた次第です。
あなたが支援したいと思ったならすればいいし、そうでなければしなくても構わないでしょう。
競馬で楽しんだからといって、競走馬引退後の馬の行く末にうしろめたさを感じる必要はないと思います。
ファンが買った馬券の額面のうち、10%~12%程度は国庫に入る。つまり税金となっています。
競馬ファンは楽しみの対価のために、テラ銭として税金を払っています。
道義の問題として馬の支援が必要なら、ファンが払った税金のうちの1パーセントでも引退馬支援に充てればいい話です。
これらを踏まえて、それでもなお馬を一頭でも長生きさせたい。そう思い支援するなら、馬もあなたもちょっとずつ幸せになれるかも。
『引退馬支援』代表的な団体と支援方法『ふるさと納税』でできる引退馬支援・馬産地支援