馬券のインターネット販売の伸びによりここ数年売上が増加している、帯広市が主催する「ばんえい競馬」は、大型馬が最大で1トンにもなるソリを曳く、馬の力強さを競うレース。
犂(からすき:鋤の大きいもの)や木材などを積載したソリを曳いてきた「輓馬」の力比べの要素を色濃く残した、伝統ある競馬です。世界で唯一、北海道だけで行われています。珍しすぎるため、世界の競馬関係の統計に反映されていなかったりします。
ばんえい競走はかつては北見競馬場岩見沢競馬場・旭川競馬場でも行われていましたが、バブル崩壊後の1991年以降は馬券の売上が下がり続けたために存続困難となり、2006年度には3場が撤退。現在は帯広市のみで開催されています。
2011年には売上が103億6400万円にまで落ち込み存続の危機に見舞われたものの、馬券のネット販売や番組(レース編成)改革の効果が表れて持ち直し、2011年からは売上が増加に転じました。
そして昨年度2017年度の売上(馬券販売)額が前年度比36.1%増の219億9264万円となり、帯広単独開催に移行した07年度以降の最高額を更新したと報じられています。売上が好調な理由はネット販売で、全体の78.5%にあたる172億6904万円を占めています。
売上が伸びて存続の危機から脱したことでみんなハッピー…かと思いきや、先行きには不安も囁かれています。
原因は輓馬生産の大幅な落ち込みによるもの。
能力検査を受ける馬の頭数自体が減り、ばんえい競走への適性が低い馬(能力が高くない馬)もレースに出るようになったこと。
強い馬同士の競い合いをみる競馬で、能力の低い馬が増えれば面白みは減ってしまう。そのためレースの質が維持できるかを危惧する声が上がっています。
開催競馬場3場が閉鎖され、競走馬の需要が減少すれば生産頭数が減るのは自然な流れ。しかしこの生産頭数の減少の影響が思わぬところにも出ています。それは馬肉の供給。
能力検査に落ちた馬は馬肉として転用されるため、生産頭数が減れば馬肉となる馬の供給も減ることになります。
生産頭数減少の原因は、生産牧場の後継者不足と、よりコストパフォーマンスのよい牛生産への転換によるもの。
馬生産と馬肉供給。切っても切り離せない二つの関係について報じた、テレビ北海道の「けいざいナビ北海道」がYoutubeにアップされています。
「競馬は馬を使い捨てにしている」と言われることもありますが、食肉に結び付いているばんえい競馬は、情と経済活動について考える手がかりになるかもしれません。
競馬を知らない人にも分かりやすい構成になっているので、お時間があればご覧ください。
馬は農業や林業でどう用いられていたのか – 輓馬(ばんば)の仕事ぶりを動画で見る
ばんえい競馬 存続の危機
▼ばんえい競馬 存続の危機!?売り上げ好調の裏側で①
売上が回復している中央競馬・地方競馬でも、サラブレッドの生産頭数は2017年では7080頭(サラ系1頭含む)。10407頭を記録した1992年には遠く及ばない状態。
中央競馬は1999年に最高の売上を達成したものの、馬生産はバブル崩壊後右肩下がりとなりました。息をふき返したのはここ数年のことです。
▼ばんえい競馬 存続の危機!?売り上げ好調の裏側で②
馬肉の供給減と価格高騰
▼ばんえい競馬 存続の危機!?売り上げ好調の裏側で③
主種(大型種)生産への取り組みについて
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