環境省はむちゃくちゃだなと思うことが多々あります。環境問題にしても動物愛護についても、筋が通らんだろうということが多々ある。
というわけで、もっとも変だと思う「環境省の終生飼養の認識」について書きます。
動物愛護法と環境省の解釈のズレ
平成25年9月1日より動物愛護管理法が改正され、動物の終生飼養が義務付けられています。
終生飼養とは、その生命を終えるまで適切に飼養すること、とされています。境省H25年のものでもそう明記されている。
しかし、一般にはペットや展示動物に限っています。たとえば岡山市保健所のページではこう書かれています。
平成25年9月1日より動物愛護管理法が改正されペットの終生飼養について明示されました
動物を飼う者は、動物がその命を終えるまで適切に飼養すること(終生飼養)が法改正で明示されました。
- ペットが年老いた・病気になった
- ペットに子供が生まれた
- ペットが言うことをきかない・ほえて困る
- ペットに飽きた
- 引越しや入院でペットを手放したい
- 飼育に関わる金銭的理由
これまで、上に記したような理由で引取りの相談を受けてきました。
終生飼養の対象はペットではなく「動物」です。産業動物、実験動物の区別は条文にはありません。
実際の条文をみると、第七条4項にそう明記されています。再度書きますが、終生飼養の義務はペットとは限定されていません。
第三章 動物の適正な取扱い
第一節 総則
(動物の所有者又は占有者の責務等)
第七条 動物の所有者又は占有者は、命あるものである動物の所有者又は占有者として動物の愛護及び管理に関する責任を十分に自覚して、その動物をその種類、習性等に応じて適正に飼養し、又は保管することにより、動物の健康及び安全を保持するように努めるとともに、動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、生活環境の保全上の支障を生じさせ、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない。この場合において、その飼養し、又は保管する動物について第七項の基準が定められたときは、動物の飼養及び保管については、当該基準によるものとする。4 動物の所有者は、その所有する動物の飼養又は保管の目的等を達する上で支障を及ぼさない範囲で、できる限り、当該動物がその命を終えるまで適切に飼養すること(以下「終生飼養」という。)に努めなければならない。
7 環境大臣は、関係行政機関の長と協議して、動物の飼養及び保管に関しよるべき基準を定めることができる。
終生飼養の条件は「飼養又は保管の目的等を達する上で支障を及ぼさない範囲」と定められています。家畜動物の目的を達するため、つまり屠畜まで支障を及ぼさない範囲で飼養することとしているわけです。
この説明なら理解できます。
環境省の独自解釈
しかし、環境省は「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の解説」のパンフレットでこう書いています。
環境省_実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の解説 (env.go.jp)
動物の分類 | 飼養形態 |
---|---|
家庭動物等(伴侶動物・学校飼育動物など) | 終生飼養 |
展示動物(動物園動物など) | 終生飼養 |
産業動物(家畜) | 非終生飼養 |
実験動物(動物実験に利用される動物) | 非終生飼養 |
野生動物(人に飼養・保管されていない動物) | ─ |
注)野生状態(非飼育下)にある野生生物は、動物愛護管理法の規制対象に含まれない。

実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の解説
環境省自然環境局総務課動物愛護管理室 編集
実験動物飼養保管等基準解説書研究会 執筆
しかし動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)のどこを見ても終生飼養の対象となる動物を限定していないし、「非終生飼養」でいいなどとは書かれていません。
法律無視の環境省の独自解釈です。
法曹関係の動物愛護法の解説でもこの部分には突っ込むことなく、産業動物・実験動物を非終生飼養としています。
環境大臣の定める基準?
「環境大臣は、関係行政機関の長と協議して、動物の飼養及び保管に関しよるべき基準を定めることができる。」としています。
つまり環境大臣が基準を定めることができることになっています。ただし、法律を上書きできるわけがない。しかし、一応環境省の終生飼養についての基準を確認してみます。
環境省_動物の適正な取扱いに関する基準等 [動物の愛護と適切な管理] (env.go.jp)
平成14年環境省告示第37号
最終改正:令和2年環境省告示第21号第1 一般原則
1 家庭動物等の所有者又は占有者(以下「所有者等」という。)は、命あるものであ
る家庭動物等の適正な飼養及び保管に責任を負う者として、動物の健康及び安全を保
持しつつ、その生態、習性及び生理を理解し、愛情をもって家庭動物等を取り扱うと
ともに、その所有者は、家庭動物等をその命を終えるまで適切に飼養(以下「終生飼
養」という。)するように努めること。
家庭動物に関してはかかれている。他方、産業動物に関しては?
昭和62年総理府告示第22号
最終改正:平成25年環境省告示第85号
「終生飼養」の文言なし。
産業動物に関する終生飼養の定義はしていません。
まとめ
ふつうに考えれば「適切な飼養」のもとに屠殺までを終生飼養とすれば家畜にも当てはめられるので、ペットも産業動物も分ける必要はない。
命を大切というなら、それこそ畜産動物の終生飼養を否定したり、定義を避けてはいけないのではありませんか?少なくとも条文にはあるんだから。
「ありがたく頂く」のであれば、それこそ避けてはいけないと考えるのが道徳心だと思いますよ。